年金振込通知書や「ねんきん定期便」を見て、「え、これだけ…?」と、思わず声が漏れた経験はありませんか。
現役時代の収入から考えると、あまりの少なさに愕然とします。特に国民年金であれば、その厳しさはより一層身に染みるかもしれません。満額でも月々約6.8万円(令和6年度)です。ここから保険料や税金が引かれ、家賃や光熱費を払えば、ほとんど手元に残らない…。「この年金額で、どうやって生きろというのか」、そんな声が日本中で聞こえています。
多くのメディアでは「節約」や「資産運用」が叫ばれますが、そもそも元手となるお金に余裕がない、という方も少なくありません。
そこでこの記事では、視点を変えます。 テーマは、あなたの65年以上の人生で培った「経験」や「人柄」、「好きなこと」を新しい「収入」に変えるための『働き方図鑑』です。これは、国民年金だけを頼りにする生活から抜け出すための具体方針でもあります。
4つの働き方タイプからあなたに合ったものを見つけ、具体的な第一歩を踏み出すための「自己分析3ステップ」まで、徹底的にガイドします。
さあ、あなただけの新しい収入の作り方を見つける旅を、ここから始めましょう。
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【残酷な現実】なぜ、国民年金だけでは生活できないのか?
老後の生活設計を考える上で、公的年金は最も基本的な収入源です。しかし、特に自営業者やフリーランスなどが加入する「国民年金」だけで、本当に安定した生活を送ることは可能なのでしょうか。本稿では、公的な統計データを基に、国民年金だけに頼る生活がいかに困難であるか、その構造的な問題を明らかにします。
主要データ(2024年基準)
項目 | データ | 出典 |
国民年金(老齢基礎年金・満額) | 68,000 円/月 | 厚生労働省 |
65歳以上・夫婦のみ無職世帯 消費支出 | 256,521 円/月 | 総務省統計局 |
65歳以上・夫婦のみ無職世帯 月間赤字額 | ▲34,058 円/月 | 総務省統計局 |
65歳以上・単身無職世帯 消費支出 | 149,286 円/月 | 総務省統計局 |
65歳以上・単身無職世帯 月間赤字額 | ▲27,817 円/月 | 総務省統計局 |
高齢者世帯で「収入=公的年金100%」の割合 | 41.7% | 厚生労働省 |
2024年平均消費者物価上昇率 | 3.2% | 総務省統計局 |
平均寿命(2023年簡易生命表) | 男性 81.09年/女性 87.14年 | 厚生労働省 |
生活費と年金額の「そもそものケタ違い」
まず直視すべきは、国民年金の受給額と、高齢者の平均的な生活費との間に存在する圧倒的な差です。
2024年度の国民年金(老齢基礎年金)の満額は月額68,000円です。これは40年間、保険料を一日も欠かさず納付した場合の金額であり、多くの人にとっては理想値に過ぎません。 一方で、総務省統計局の家計調査によると、65歳以上の高齢者世帯の平均的な消費支出は、夫婦のみの無職世帯で月額約25.7万円、単身の無職世帯でも月額約14.9万円 に上ります。
国民年金の満額収入(6.8万円)が、この支出をどの程度カバーできるか計算すると、その厳しさは一目瞭然です。
- 夫婦世帯の場合:6.8万円 ÷ 25.7万円 = 約26.5%
- 単身世帯の場合:6.8万円 ÷ 14.9万円 = 約45.6%
つまり、国民年金だけでは、夫婦世帯の生活費の4分の1強、単身世帯ですら半分以下しか賄えないのです。実際に家計調査では、高齢無職世帯は夫婦で月約3.4万円、単身でも月約2.8万円の赤字となっており、この不足分を貯蓄の取り崩しや、働いて得た追加収入で必死に埋めているのが実態です。
「年金しかない」世帯が4割超という現実
さらに深刻なのは、収入のほぼすべてを公的年金に依存している世帯が非常に多いという事実です。厚生労働省の調査によれば、公的年金を受給している高齢者世帯のうち、総所得に占める年金の割合が100%の世帯は41.7% にも達します。(出典: 厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況」)
これは、高齢者世帯の4割以上が、年金以外の給与収入や事業収入、仕送りなどを一切持たないことを意味します。このような世帯は、近年の物価高や光熱費の高騰といった経済的ショックの影響を直接的に、そして極めて深刻に受けやすい、非常に脆弱な立場に置かれていると言えます。
インフレと長寿化が招く「赤字の長期化」
この赤字構造は、将来的にさらに悪化するリスクをはらんでいます。その要因は「インフレ」と「長寿化」です。
年金額は物価の変動に合わせて改定される「物価スライド制」が採用されていますが、物価上昇率に年金の改定率が追いつかない年が続けば、年金の実質的な価値(購買力)は目減りしていきます。加えて、日本人の平均寿命は伸び続けており、65歳で退職した後の生活期間は20年以上に及ぶのが当たり前になりました。仮に、夫婦世帯で毎月3.4万円の赤字が20年間続くと仮定すると、その不足額の累計は約816万円(3.4万円 × 12ヶ月 × 20年)にも膨れ上がります。これは、退職時に十分な貯蓄がなければ、生活が破綻しかねないことを示唆しています。
国民年金だけに依存する3つのリスク
以上の分析から、国民年金だけに依存する生活には、具体的に以下の3つのリスクが伴います。
① 貯蓄の取り崩し速度の上昇
毎月の赤字を補填するために、貯蓄を取り崩し続けることになります。高齢者世帯の平均貯蓄額は一見すると高く見えますが、それは一部の富裕層が引き上げているに過ぎません 。赤字が続けば、多くの世帯では数年から十数年で貯蓄が底を突く可能性があります。
② 医療・介護費の上振れ
年齢を重ねるにつれて、医療費や介護費の負担は増加する傾向にあります。家計調査でも、高齢夫婦世帯の保健医療費は月平均で1.6万円を超えています 。さらに、もし介護が必要になれば、在宅介護でも月平均約5.3万円、施設介護では月平均13.8万円もの費用がかかるというデータもあり 、家計の赤字幅をさらに拡大させる大きなリスクとなります。
③ 想定外のインフレショックへの脆弱性
食料品やエネルギーといった生活必需品価格の高騰は、収入の大部分を年金に頼り、支出を切り詰める余地の少ない高齢者世帯の家計を直撃します。国民年金だけの収入では、こうしたインフレショックを吸収する余力はほとんどありません。
データが示す「国民年金だけ」の限界
公的な統計データを多角的に分析すると、国民年金(月額6.8万円)は、あくまで老後の生活を支える「最低限の基礎」に過ぎず、それだけで平均的な高齢者の生活支出を賄うことは到底不可能である、という結論が導き出されます。
毎月発生する構造的な赤字、物価上昇と長寿化による赤字の累積、そして突発的な支出増への脆弱性。これらは、国民年金だけに依存する生活がいかに危険であるかを示す動かぬ証拠です。
この厳しい現実から目を背けず、65歳以降の人生を“赤字スパイラル”から守るためには、年金以外の収入源をいかに確保するか、その設計を一日でも早く始めることが不可欠です。就労や副業による追加収入、小規模なビジネスの立ち上げ、そして現役時代から計画的に進める金融資産の活用など、一人ひとりが自らの状況に合わせて対策を講じることが、今強く求められています。
65歳からの「新しい収入の作り方」働き方タイプ別4選

①【コツコツ安定型】地域に根ざす、パート・アルバイト
昔ながらの働き方ですが、シニア世代にとっては「安定」と「社会とのつながり」を得られる貴重な選択肢です。最近では、シニア歓迎の求人や、体力に合わせた短時間勤務も増えています。
[パート・アルバイト]具体的な仕事例
- スーパーの品出し・レジ
- マンションの管理人
- 学童の見守りスタッフ
- オフィスの軽作業・清掃
[パート・アルバイト]メリット
- 収入が安定的:毎月決まった給料が得られる安心感があります。
- 社会との接点:同僚や顧客との交流が生まれ、孤立を防ぎます。
- 健康維持:適度に体を動かすことで、運動不足の解消にも繋がります。
[パート・アルバイト]デメリット
- 時間や場所の拘束:シフトや勤務地が決まっているため、自由度は低めです。
- 人間関係:職場によっては、人間関係がストレスになる可能性もあります。
- 体力的な負担:仕事内容によっては、体力的な負担を感じることがあります。
[パート・アルバイト]月収の目安
- 3万円 〜 6万円(時給1,100円〜1,300円の職場で、週に3日、1日4時間程度働いた場合)
②【スキマ時間でサクッと型】スマホで完結、スキマバイト
「働きたいけれど、毎週決まったシフトに入るのは難しい…」という方に最適なのが、このスキマバイトです。「タイミー」や「シェアフル」などのスマートフォンアプリで仕事を探し、面接や履歴書なしで、1日単位・数時間から働くことができます。
[スキマバイト]具体的な仕事例
- 飲食店のホール・キッチン補助
- 倉庫での簡単なピッキング作業
- イベント会場の設営・案内スタッフ
[スキマバイト]メリット
- 圧倒的な自由度:「明日、3時間だけ働きたい」といった働き方が可能です。
- 面倒な手続きが不要:面接や履歴書が不要で、すぐにお金がもらえる場合が多いです。
- 様々な仕事を体験:色々な職場を体験できるため、自分に合った仕事を見つけるきっかけになります。
[スキマバイト]デメリット
- 収入が不安定:入りたい仕事が常にあるとは限らず、収入は月によって変動します。
- スキルが身につきにくい:単発の仕事が多いため、専門的なスキルは身につきにくいです。
- 人気の仕事は争奪戦:条件の良い仕事は、すぐに募集が埋まってしまいます。
[スキマバイト]月収の目安
- 1万円 〜 4万円(時給1,200円〜1,600円程度の仕事を、週に2〜3回、短時間行った場合)
③【経験・スキルを活かす型】あなたの「経験」が武器になる、プチ起業
長年の職務経験や専門知識は、あなただけの強力な武器です。定年退職したから終わり、ではありません。そのスキルを求める企業や個人は、たくさんいます。「ココナラ」などのスキルシェアサービスを使えば、個人事業主として「プチ起業」を気軽に始められます。
[プチ起業]具体的な仕事例
- 元経理担当者 →中小企業の記帳代行、確定申告の相談
- 元営業マネージャー →若手社員向けのオンライン営業研修
- IT関連の職務経験者 →高齢者向けのパソコン・スマホ設定サポート
[プチ起業]メリット
- 高いやりがいと自己肯定感:自分の知識や経験で直接感謝される喜びがあります。
- 収入の上限がない:スキルの価値次第では、パート以上の収入を得ることも可能です。
- 完全な裁量:働く場所、時間、相手、価格をすべて自分で決められます。
[プチ起業]デメリット
- すぐに稼げるとは限らない:最初の実績作りや顧客獲得に時間がかかる場合があります。
- 自己管理能力が必須:仕事の管理から経理まで、すべて自分で行う必要があります。
- 営業・宣伝活動も必要:自分のスキルを「商品」としてアピールする努力が必要です。
[プチ起業]月収の目安
- 数千円 〜 10万円以上(案件単価や数によって変動。まずは月5,000円の収入を目標に)
④【好き・趣味を活かす型】「好き」を仕事に、楽しみながら稼ぐ
「特別な職務経験なんてない」という方も、ご安心ください。あなたが長年続けてきた趣味や、好きなこと。それもまた、立派な「スキル」です。楽しみの延長線上で、お小遣いを得ながら、新しい仲間と繋がることもできます。
[好き・趣味で仕事]具体的な仕事例
- 手芸や陶芸の作品を「minne」や「Creema」で販売する。
- 庭いじりが好き →個人の庭の手入れを請け負う、育て方をブログで発信する。
- 地域の歴史に詳しい →オリジナルの「まち歩きガイド」を企画・開催する。
- 動物が好き →ペットシッター、散歩代行。
[好き・趣味で仕事]メリット
- とにかく楽しい:好きなことなので、義務感がなく、夢中になれます。
- 自分のペースでできる:納期や時間に追われず、自分のペースで活動できます。
- 仲間が見つかる:同じ趣味を持つ人との交流が生まれ、生活が豊かになります。
[好き・趣味で仕事]デメリット
- 収入を得るハードルの高さ:趣味の延長なので、安定した収入に繋がるとは限りません。
- 好きが義務感に変わるリスク:収益を意識しすぎて楽しめなくなる可能性があります。
- 事務作業の発生:売上が出れば、確定申告などの事務作業も必要になります。
[好き・趣味で仕事]月収の目安
- 数千円 〜 3万円程度(まずは材料費を賄い、少しお茶代が稼げるくらいを目標に)
何から始める?「はじめの一歩」完全ガイド
4つの働き方タイプをご紹介しましたが、「自分はどれだろう…」とまだ決めかねている方もいらっしゃるかもしれません。 ご安心ください。この章では、あなたに最適な働き方を、ご自身の頭で考え、見つけ出すための「自己分析3ステップ」をご案内します。
ステップ①:あなたはどのタイプ?「4象限マトリクス」で現在地を知る
まずは、先ほどご紹介した「4象限マトリクス」をもう一度見てみましょう。

この図を見ながら、「今の自分」がどこに近いかを考えてみます。
- 横軸: 安定して働きたいか(左)、自由に働きたいか(右)
- 縦軸: 専門スキルを活かしたいか(上)、気軽に始めたいか(下)
難しく考えず、「自分はこのあたりかな?」と直感で位置付けてみてください。それがあなたの「現在地」です。
ステップ②:「どうなりたい?」理想の働き方の解像度を上げる4つの質問
次に、あなたの「理想の働き方」を具体的にするために、いくつかの質問に答えてみましょう。紙に書き出してみるのがおすすめです。
- 質問1:月にあといくら収入が欲しいですか?
- 例:「お小遣いとして1万円」「生活の足しに5万円」「やりがいのためなら金額は問わない」
- 質問2:週に何時間くらいなら、働いても良いと思えますか?
- 例:「週に数時間だけ」「週3日、午前中だけ」「時間は気にしない」
- 質問3:働く上で「これだけは譲れない」条件は何ですか?
- 例:「家から近い場所がいい」「人と話す仕事がいい」「絶対にPCは使いたくない」
- 質問4:どんな時に「楽しい」「やりがいがある」と感じますか?
- 例:「ありがとうを言われた時」「作業に集中している時」「知識を披露している時」
ステップ③:現在地と理想をすり合わせ、「はじめの一歩」を決める
最後に、ステップ①で確認した「現在地」と、ステップ②で見えた「理想」をすり合わせ、具体的な目標を決めます。
- 例1:
- 現在地:左下の「コツコツ安定型」が気になっている。
- 理想:月3万円欲しい。週3日くらい。人と話すのが好き。
- 目標:近所のスーパーやコンビニの、週3日の早朝シフトの求人を探してみよう
- 例2:
- 現在地:右上の「経験・スキルを活かす型」に挑戦したい。
- 理想:金額は小さくてもいい。自分の裁量で、やりがいを感じたい。
- 目標:「ココナラ」に登録して、『経理の相談に乗ります』と出品してみよう
- 例3:
- 現在地:右下の「スキマ時間でサクッと型」が合ってそう。
- 理想:週に数時間だけ。体力を使わず、色々なことを試したい。
- 目標:今週末「タイミー」で単発の軽作業の仕事を1回やってみよう
このように、「まずは、〇〇をしてみよう」という小さな最初の目標を決めることです。 これがあなたの新しい収入の作り方を見つける最も確実で、最も重要な初手になります。
まとめ
ここまで、4つの働き方タイプと、自分に合った道を見つけるための自己分析3ステップをご紹介してきました。「国民年金だけではやっていけない」という厳しい現実を前に、あなたに合いそうな働き方は、見つかりましたでしょうか。
大切なのは、国民年金だけでは生活が厳しいという現実を、「新しい挑戦を始めるきっかけ」と捉え直すことです。
これから新しい形で収入を得ることは、ただ生活費の足しにするためだけではありません。社会と再び繋がり、誰かから「ありがとう」と言われ、自分自身の価値を再確認する、かけがえのない「生きがい」にも繋がります。
この記事で、あなただけの「はじめの一歩」の目標はきっと見つかったはずです。「まずは、ハローワークの求人を眺めてみる」「まずは、スマホにタイミーをインストールしてみる」 「まずは、自分の経歴をノートに書き出してみる」
どんなに小さな一歩でも構いません。その一歩が、あなたのこれからの10年、20年を、より豊かで、実りあるものに変えていきます。
Silver Growth Studioは、あなたの新しい挑戦を、心から応援しています。国民年金という土台の上に、あなた自身の手で、新しい収入の柱を建てていきましょう。