徘徊検知センサー徹底比較|赤外線・GPS・BLE3方式について解説【見守りIoT】

介護DX

高齢化社会が進む中、自宅での見守りは家族の安心を支える大きなテーマです。特に認知症や夜間徘徊を抱える方がいる家庭では、介護者の負担と不安が日々の生活に影響を及ぼします。徘徊検知センサーは、離れた場所でも高齢者の動きを感知し、異常を素早く知らせることで「いつでも見守られている」安心感をもたらします。本記事では、赤外線・GPS・BLEの3方式を比較し、自宅の環境や予算に合わせた最適なセンサー選びのポイントをわかりやすく解説します。導入前の基礎知識として、まずは各方式の特徴をつかみ、ご家庭にぴったりの見守りIoT機器を見つけましょう。

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  1. 徘徊検知センサーを自宅で使う意義
    1. 高齢者の徘徊リスクと家族の不安
    2. 見守りIoT導入がもたらす安心感
  2. 徘徊検知センサー3方式の基本仕組み
    1. 赤外線センサー(PIR)
    2. GPSセンサー
    3. BLE(Bluetooth Low Energy)センサー
  3. 方式別「費用比較」
    1. 赤外線センサー(PIR)の費用
      1. 初期導入コスト
      2. ランニングコスト
    2. GPSセンサーの費用
      1. 初期導入コスト
      2. ランニングコスト
    3. BLE(Bluetooth Low Energy)センサーの費用
      1. 初期導入コスト
      2. ランニングコスト
    4. 比較表:方式ごとの目安価格帯
      1. 選び方のポイントまとめ
  4. 方式別「誤報率比較」
    1. 赤外線センサー(PIR)の誤報率と要因
      1. 誤報の主な原因
      2. 誤報率の目安
      3. 誤報対策と信頼性向上ポイント
    2. GPSセンサーの誤報率と要因
      1. 誤報の主な原因
      2. 誤報率の目安
      3. 誤報対策と信頼性向上ポイント
    3. BLEセンサーの誤報率と要因
      1. 誤報の主な原因
      2. 誤報率の目安
      3. 誤報対策と信頼性向上ポイント
    4. 誤報対策のポイント一覧
  5. 徘徊検知センサーの方式別メリット・デメリット
    1. 赤外線センサー
      1. メリット
      2. デメリット
    2. GPSセンサー
      1. メリット
      2. デメリット
    3. BLEセンサー
      1. メリット
      2. デメリット
  6. 自宅に最適な方式の選び方
    1. 間取り・居住エリア別のおすすめパターン
    2. 予算と運用のしやすさの両立
    3. ペット同居時や集合住宅での注意点
  7. 導入前に押さえるチェックポイント
    1. 電源・ネットワーク環境の確認
    2. スマホアプリ連携やアラート方法の確認
    3. サポート体制・保守サービスの有無
  8. 徘徊検知センサーサービス別比較
    1. サービス別比較表
    2. 口コミまとめ
  9. 事例紹介:田中さん宅のセンサー活用ケース
  10. まとめ

徘徊検知センサーを自宅で使う意義

高齢者の徘徊リスクと家族の不安

自宅で暮らす高齢者の中には、認知症による帰宅行動や夜間の無目的な移動で転倒・事故につながるケースが少なくありません。介護者は日中だけでなく、その後の見守りにも神経を尖らせ、就寝時や外出時の「もしもの事態」を常に心配しています。また、介護負担の増大は肉体的疲労だけでなく、精神的ストレスや睡眠不足を招き、結果として家族のQOL(生活の質)を低下させる要因にもなります。

見守りIoT導入がもたらす安心感

徘徊検知センサーは、離れた場所にいる家族や介護スタッフへリアルタイムで通知を送ることができるため、「そばにいなくても見守れる」仕組みを実現します。赤外線センサーなら部屋の出入口を通過した瞬間を検知し、GPSは屋外での位置を把握、BLEは屋内スポットでの滞在を捉えます。異常時に自動でスマホへアラートが届くため、介護者は休息時間を確保しながら、万が一の際には迅速に対応可能です。さらに、各種センサーは設置場所や通信方式によってコストも異なるため、ご家庭の間取りや予算に合わせた最適な選択が重要です。

徘徊検知センサー3方式の基本仕組み

徘徊検知センサーには、主に赤外線(PIR)、GPS、BLE(Bluetooth Low Energy)の3つの方式があります。それぞれの検知原理と通信方法を理解することで、自宅環境に合った機器選びが可能です。

赤外線センサー(PIR)

人体から放射される赤外線の変化を捉える仕組みです。設置したエリア内で高齢者が通過すると、センサー内部の検知素子が温度変化を感知し、信号を出力。壁掛け型や天井設置型が多く、居室から廊下への移動をピンポイントで把握できます。

  • 検知範囲:一般的に水平100°×垂直60°程度。
  • 通信方式:Wi-Fiや専用無線(433MHz帯など)でゲートウェイへ中継し、インターネット経由でスマホへ通知。

GPSセンサー

携帯可能なモバイル端末(ウェアラブルタグなど)に内蔵されたGPSモジュールで位置情報を取得。外出時の徘徊検知に適しており、施設敷地外への移動をリアルタイムに追跡できます。

  • 測位原理:衛星からの電波到達時間差で緯度・経度を計算。
  • 通信方式:LTE/3G回線を利用し、センターサーバーへ定期的に位置を送信。

BLE(Bluetooth Low Energy)センサー

BLEタグ(小型ビーコン)を衣服や腕に装着し、家屋内に設置したBLEゲートウェイがタグの信号強度(RSSI)を測定。信号強度からおおよその距離を推定し、家屋内での滞在場所を把握します。

  • 検知範囲:タグ-ゲートウェイ間で最大30m程度。
  • 通信方式:BLE通信でゲートウェイへ接続後、Wi-Fiや有線LAN経由でクラウドへ転送。

方式別「費用比較」

赤外線センサー(PIR)の費用

初期導入コスト

  1. センサー本体
    • 価格帯:1台あたり約3,000~10,000円程度
    • ポイント:屋内用に壁掛け型/天井取付型があり、検知角度や検知距離(水平90~120°、最大距離5~8m程度)によって価格が変動します。
  2. ゲートウェイ(中継機)
    • 価格帯:1台あたり約10,000~25,000円程度
    • 役割:複数のPIRセンサーと接続し、Wi-Fiまたは有線LAN経由でクラウドへデータ転送します。
  3. 設置・工事費
    • 相場:基本的に自己設置可能ですが、配線・固定が必要な場合は別途5,000~15,000円/箇所程度の工事費用がかかるケースもあります。

総額の目安:小規模(センサー2台+ゲートウェイ1台)で約20,000~50,000円程度です。

ランニングコスト

  • 通信費:既存の家庭用Wi-Fiを利用すればほぼ不要です。Wi-Fi未導入の場合は月額500~1,000円程度のホームルーター利用料が必要です。
  • 保守・サポート:メーカーの延長保証プラン(年間5~10%程度の本体価格)が必要であれば、年間数千円程度です。

電池交換費用:電池式の場合は1~2年ごとに単三またはリチウム電池(500~1,000円/本)交換が必要です。

GPSセンサーの費用

初期導入コスト

  1. タグ端末(ウェアラブル型)
    • 価格帯:1台あたり約15,000~30,000円程度
    • 特徴:バッテリー内蔵で連続稼働時間は約1~3日。防水・耐衝撃仕様の製品もあり、屋外徘徊時の位置把握に強みです。
  2. 管理プラットフォーム利用料(初期設定費含む)
    • 価格帯:初期登録料として5,000~20,000円程度
    • 内容:専用アプリやWeb管理画面の有料プラン。地図表示・履歴保存容量などによって変動します。

総額の目安:タグ2台+初期登録で約40,000~80,000円程度です。

ランニングコスト

  • 通信料金
    • SIMデータ通信料:月額500~1,500円/タグ
    • 契約形態:定額プラン(~500MB/月)や従量課金プラン(1KBあたり0.01円程度)から選択可能です。
  • プラットフォーム利用料:月額1,000~5,000円程度(アラート数やデータ保存期間により増減)です。
  • バッテリー交換・端末保守:1~2年に一度のバッテリー交換(5,000~10,000円)や故障時の交換費用が発生します。

BLE(Bluetooth Low Energy)センサーの費用

初期導入コスト

  1. BLEタグ(ビーコン)
    • 価格帯:1個あたり約1,000~3,000円程度
    • 特徴:ボタン電池で1年以上動作。衣服やアクセサリに装着しやすい小型軽量設計です。
  2. BLEゲートウェイ
    • 価格帯:1台あたり約10,000~30,000円程度
    • 役割:家中に配置してタグのRSSI(受信強度)からおおよその位置を推定し、Wi-Fi/有線LAN経由でクラウドへ送信します。
  3. 設置工事/設定費
    • 相場:自己設置可能だが、最適な位置調整やゲートウェイの数決定に専門業者設定(10,000~25,000円)が必要となる場合があります。

総額の目安:タグ4個+ゲートウェイ2台で約30,000~80,000円程度です。

ランニングコスト

  • 通信費:Wi-Fi既設環境下であれば不要。未導入の場合はホームルーター月額500~1,000円程度です。
  • 電池交換費用:タグのボタン電池交換(CR2032等、200~500円/個)が1~2年で発生します。
  • プラットフォーム利用料:オプションでログ蓄積や管理画面の高機能化を選ぶと月額数百~数千円です。

比較表:方式ごとの目安価格帯

方式初期導入コスト(目安)ランニングコスト(目安)特に向くケース
赤外線20,000~50,000円Wi-Fi利用でほぼゼロ/未導入時 月額500~1,000円屋内のみを手軽に低コストで見守りたい
GPS40,000~80,000円月額500~1,500円/タグ+プラットフォーム月額1,000~5,000円外出時・敷地外の徘徊をカバーしたい
BLE30,000~80,000円Wi-Fi利用でほぼゼロ/オプション月額数百~数千円家屋内の位置把握を高精度で行いたい

選び方のポイントまとめ

  1. 低予算で屋内中心なら「赤外線」
    設置が簡単でランニングコストも抑えられるため、小規模な見守りには最適です。
  2. 外出リスク対策なら「GPS」
    屋外の移動をリアルタイムに追跡します。バッテリー管理と通信費を許容できる家庭向けです。
  3. 家屋内の正確な位置把握なら「BLE」
    複数ゲートウェイ設置で部屋ごとの滞在を推定します。タグ数やゲートウェイ数で柔軟に拡張が可能です。

方式別「誤報率比較」

センサー方式ごとに発生しやすい誤報の原因を把握し、対策を講じることで見守りIoTの信頼性を高められます。本章では、赤外線・GPS・BLEそれぞれの代表的な誤報要因と、その防止策・改善ポイントを詳しく解説します。

赤外線センサー(PIR)の誤報率と要因

誤報の主な原因

  • ペットによる誤検知
    小型犬や猫など、体温のある動物がセンサーの検知範囲を横切ると、人間と同様に温度変化を感知し誤報が発生します。特に体高50cm以上の犬種では要注意です。
  • エアコンや扇風機の風
    冷暖房によって生じる微弱な空気の流れが、センサー内部の検知素子に軽微な振動や温度ムラを与え、「人が動いている」と誤解されるケースがあります。
  • 日光の直射
    朝夕の斜光がセンサーの検知面に当たると、急激な温度変化として捉えられ、誤報に繋がることがあります。

誤報率の目安

メーカー公表値やフィールドテスト報告では、ペット同居環境での誤報率が月間数回~十数回程度とされる製品が多いようです。エアコン風や日光の影響を受けやすい設置環境では、誤報が週に1回以上起こるケースもあります。

誤報対策と信頼性向上ポイント

  1. 設置高さと角度の最適化
    ペットの体高より少し高い位置(床面から約1.2~1.5m)に設置し、検知角度を下方に絞ることで、ペットの動きを検知範囲外に抑制できます。
  2. マスキング機能の活用
    高機能PIRセンサーには、可動域マスキング(感知エリアの一部を非検知ゾーンに設定)機能があります。ペットの通り道やエアコン吹出口にマスキングテープを貼り、誤検知を防ぎましょう。
  3. 二重検知ロジックの導入
    赤外線だけでなく、振動センサーや音響センサーと併用することで、赤外線単独の誤報を抑制。両方の検知条件を満たした場合のみ通知する方式です。

GPSセンサーの誤報率と要因

誤報の主な原因

  • 位置ズレ(ドリフト)
    衛星測位は電波到達時間差による計算ですが、建物の陰や樹木の下、トンネル付近などでは受信状態が悪くなり、実際の位置から数十メートルずれた情報を返すことがあります。
  • 電波遮蔽
    高層ビル街や密集住宅地ではマルチパス(反射波)の影響を受けやすく、直線的な測位精度が低下。誤って「屋外徘徊」と判断されるケースがあります。

誤報率の目安

屋外のみを想定したテストでは、良好環境下での位置ズレが平均5~10m程度、遮蔽の強い場所では20m以上の誤差が報告されています。誤報としては、屋外から屋内への帰還を検知できず、外出継続とみなされるケースや、その逆パターンが数週間に1度発生することがあります。

誤報対策と信頼性向上ポイント

  1. ハイブリッド測位の活用
    GPSとWi-Fi位置情報、BLE測位を組み合わせたハイブリッド測位機能を利用することで、屋内外の切り替えをスムーズにし、単独GPSの誤報を減少させます。
  2. 測位間隔の調整
    連続して測位するとバッテリー消耗が激しくなる一方、間隔を空けすぎるとドリフト誤差が拡大。屋外エリアでは1分間隔、屋内エリアでは5分~10分間隔とモード切り替えして使用する設定が効果的です。
  3. フェンス機能(ジオフェンシング)の最適化
    施設敷地や自宅敷地をポリゴン指定し、境界を越えたときだけ通知を行う仕組みを設定。位置ズレによる誤報発生時にも、敷地ポリゴン内での誤差は無視できます。

BLEセンサーの誤報率と要因

誤報の主な原因

  • 圏内判定のブレ
    BLEタグが発する電波強度(RSSI)をもとに「近い」「遠い」を判定しますが、RSSIは電波減衰や反射の影響を受けやすく、同じ場所に留まっていても±3~5dBm前後の変動が生じます。
  • 壁や家具による干渉
    コンクリートや金属、厚い木製家具の裏側など、障害物が間に挟まると通信が不安定になり、一時的に圏外と判定されることがあります。
  • 電波混信
    家庭内で他のBLE機器(スマホやスマートスピーカー)が多いと、チャネル干渉でパケットロスが起こり、タグを見失う場合があります。

誤報率の目安

ゲートウェイ1台での単純テスト環境では、タグが一定範囲内にいるにも関わらず10~15%のパケットロスが観測されることがあります。実運用環境では、壁や家具の配置によって誤判定(近/遠の誤認識)が一日に数回発生する可能性があります。

誤報対策と信頼性向上ポイント

  1. ゲートウェイ配置の最適化
    家屋内をゾーニングし、各ゾーンに最低1台以上のゲートウェイを配置。電波到達圏内を重複させることで、どこか一台が必ずタグを検出できるように設計します。
  2. フィルタリングアルゴリズムの実装
    単発のRSSI変動を排除するため、移動距離や滞在時間に応じたスムージング処理(移動平均フィルタなど)をかけ、短時間の波打ち誤差を通知対象外にします。
  3. チャネル選択のマネジメント
    BLEのチャネル間隔を工夫し、家庭内Wi-Fi(2.4GHz帯)との干渉を避けるチャネル走査を定期的に実施します。
  4. 定期キャリブレーション
    生活動線に合わせてRSSI閾値を調整し直す「キャリブレーションモード」を数ヶ月に一度実行。家具の配置変更や増設機器に合わせて精度を維持します。

誤報対策のポイント一覧

方式誤報要因主な対策
赤外線ペット/風/日光設置高さ・角度調整/マスキング機能/二重検知ロジック併用
GPS位置ズレ/電波遮蔽ハイブリッド測位/測位間隔切替/ジオフェンシング最適化
BLERSSI変動/障害物干渉/混信ゲートウェイ最適配置/スムージングフィルタ/チャネルマネジメント/定期キャリブレーション

各方式には固有の誤報リスクがありますが、設置環境に合わせたチューニングや複数方式の併用により、大幅に信頼性を向上できます。実際の導入にあたっては、まず自宅や施設の間取り図をもとに想定誤報パターンを洗い出し、それぞれの対策を組み合わせて運用設計を行うことをおすすめします。

徘徊検知センサーの方式別メリット・デメリット

赤外線、GPS、BLE各方式の特徴を整理すると、それぞれにメリットとデメリットがあります。

赤外線センサー

メリット

  • コストパフォーマンス◎:センサー本体もゲートウェイも安価で、初期導入費用を抑えやすい。既存Wi-Fi環境があればランニングコストはほぼゼロです。
  • 低消費電力:電池駆動モデルでも長寿命です。
  • 設置が簡単:壁掛け/天井取り付け型が主流で、自己設置で完結可能です。

デメリット

  • 検知範囲限定:センサー前方の一定範囲のみを感知。複数台設置しないと死角ができやすくなります。
  • 設置場所の制約:天井や壁に固定するため、許可が必要な賃貸住宅やリフォーム箇所では工事が難しい場合があります。
  • 誤報要因:ペットや空調風、日光変化に弱く、誤報対策が必須です。

GPSセンサー

メリット

  • 広範囲カバー:屋外での位置追跡が可能。自宅敷地外や近隣徘徊まで対応できます。
  • リアルタイム通知:外出・帰宅を即時検知でき、緊急時の対応が迅速にできます。
  • 携帯性:ウェアラブルタグを装着すれば、どこにいても追跡できます。

デメリット

  • 高コスト:端末価格が高く、月額通信料も発生するため、複数タグ運用は予算的負担が大きくなります。
  • 屋内不向き:GPS電波が建物内で弱まり、位置測位が不安定になります。
  • バッテリー管理:充電/交換の手間がかかるため、介護者の運用負荷が増します。

BLEセンサー

メリット

  • 屋内特化の高精度:RSSIに基づく距離推定で、部屋ごとの居場所を把握が可能です。
  • 低コスト拡張性:タグやゲートウェイを必要数追加しやすく、部分導入から段階的に拡張できます。
  • 長寿命タグ:ボタン電池で1年以上動作する製品が多いです。

デメリット

  • コミュニティサポート必要:設置ゾーン設計やゲートウェイ配置は専門知識が求められ、業者と協力が必要な場合が多いです。
  • 障害物干渉:壁や家具、家電などにより電波減衰が起こりやすいです。
  • 微妙な誤判定:RSSI変動で“近い”“遠い”の判定が揺れ、フィルタリング設定が必須です。

自宅に最適な方式の選び方

自宅環境や導入目的に応じて最適な見守り方式を選ぶポイントを解説します。

間取り・居住エリア別のおすすめパターン

  • 小〜中規模マンション/アパート(1〜2LDK)
    赤外線センサー×1~2台で居室出入口を監視します。コスパ重視で十分な場合が多いです。
  • 戸建て住宅(3LDK以上)
    部屋数が多い場合は赤外線を複数台設置、またはBLEゲートウェイを併用して居場所特定精度を高めるとよいです。
  • 集合住宅の共用部(廊下・エントランス)
    GPSタグを携帯させ、外出時の動線全体を把握します。BLEは電波干渉が多いため室内中心運用に留めるとよいでしょう。

予算と運用のしやすさの両立

  1. ローコスト運用重視
    初期費用・ランニングコストともに抑えたいなら赤外線一択です。後からBLEを部分導入し、誤報対策や死角補完を図ることができます。
  2. 精度と範囲重視
    外出把握が必須ならGPSタグを検討しましょう。ただし、月額通信料と充電管理が必要となる運用負荷を考慮してください。
  3. 運用負荷軽減
    BLEのタグ・ゲートウェイ併用で自動検知を強化するとよいでしょう。タグ電池交換・Wi-Fi運用のみで、バッテリー管理は赤外線方式と同等です。

ペット同居時や集合住宅での注意点

  • ペット同居
    赤外線は誤報リスク大です。マスキング設定や二重検知ロジック搭載機種を選ぶか、BLEとの併用で誤報を防ぎましょう。
  • 集合住宅
    BLEは隣戸のゲートウェイ電波を拾う場合があります。ゲートウェイ配置を工夫し、隣室からの混信を防ぐチャネル設定が必要です。GPSは電波遮蔽が激しいため、屋外利用だけに限定しましょう。

導入前に押さえるチェックポイント

徘徊検知センサーを導入する前に、次の3つの観点を確認しておくことで、設置後のトラブルや運用負荷を大幅に軽減できます。

電源・ネットワーク環境の確認

  • 電源の確保
    赤外線センサーやBLEゲートウェイはコンセント電源、GPSタグはバッテリー式が主流です。設置場所にコンセントがない場合は、延長コード・USB給電アダプタの用意や、電池式モデルの選定を検討しましょう。
  • Wi-Fi/有線LANの整備
    赤外線センサーやBLEゲートウェイは、ネットワーク経由でクラウドに接続するため、安定したインターネット環境が必須です。電波が届きにくい場所にはWi-Fi中継機を設置し、ゲートウェイとセンサー間の通信断を防ぎます。
  • 屋外/集合住宅の電波環境
    GPSタグはLTE/3G回線を利用するため、地下室や高層階の電波状況を事前にチェック。MVNO回線の場合は通信網のカバーエリアも確認しておくと安心です。

スマホアプリ連携やアラート方法の確認

  • 対応OS・バージョン
    iOS/Androidそれぞれの対応バージョンや機種制限を導入前に確認しましょう。古いスマホでは正常動作しないケースがあります。
  • 通知方法の多様性
    センサー検知時のアラートを「プッシュ通知」「SMS」「メール」「音声通話」など複数手段で受け取れるか確認しましょう。夜間の誤報時には、プッシュのみだと気づかない可能性もあるため、SMS併用や電話着信設定がある製品を選ぶと運用が安定します。
  • アプリの操作性
    操作画面の見やすさ、アラート履歴の検索機能、複数ユーザー共有機能など、介護者のITリテラシーに合ったサービスを選ぶと、導入後の定着率が高まります。

サポート体制・保守サービスの有無

  • 初期設定サポート
    導入作業を業者に依頼する場合は、設置工事費やネットワーク設定費用がどこまで含まれるかを確認しましょう。セルフ設置モデルでも、オンラインサポートや遠隔設定支援の有無をチェックしましょう。
  • 故障・交換対応
    故障時の無償交換期間や、有償延長保証プランがあるか確認しましょう。特にGPSタグは落下や水濡れで故障するリスクがあるため、交換費用を抑えられるメーカーが安心です。
  • ソフトウェアのアップデート
    センサー側ファームウェアやアプリは定期的なアップデートで機能改善やセキュリティ対策が行われます。無償アップデートの期間や、有償サポート終了後の対応についても契約前に確認しておきましょう。

徘徊検知センサーサービス別比較

それぞれ価格体系とサポート範囲が大きく異なるため、

  1. 外出頻度(ほぼ屋内/散歩中心/外来通院あり)
  2. 初期・月額の許容額
  3. 駆け付けや地域協力の要否

を整理したうえで比較表を照らし合わせると、ご家庭に最適なサービスが見えてきます。

サービス別比較表

サービス名検知方式初期費用月額費用主な特色
わかーる6900(エクセルエンジニアリング)赤外線+無線セット70,070円(受信機+送信機+赤外線センサー)0円(電池代のみ)介護保険レンタル対象。4 m以内で遮光を検知しアラームと30秒映像表示、到達距離100 m。
ココセコム(セコム)GPS/LTE加入料4,400円+端末レンタル0円1,320円/月(位置検索込み)+駆け付け11,000円/回24時間オペレーター対応・駆け付け可。離宅/エリア通知・はなれた通知など最新機能を実装。
どこかなGPS 2(ソフトバンク)GPS+Wi-Fi+基地局11,880円(端末)528円/月 ※初回6 か月無料最大1.5 か月バッテリー、11台のスマホで共有可。のりもの検知・ボタン通知付き。
あんしんウォッチャー(KDDI au)GPS+Wi-Fi+基地局11,000円(端末)539円/月 ※初年無料9人まで共有、半径100-500 mを10 m刻みでジオフェンス設定。セコム駆け付けオプション30分5,500円。
みまもりタグ(ALSOK)BLEビーコン25,300円(感知器セット)550円/月(駆け付け無)3,850円/月(駆け付け有)重量14 g・電池寿命約1年。20 m圏の感知器&地域ボランティア網で外出検知。

*工事・配送料等を除く目安。最新料金は各公式サイトで要確認。

口コミまとめ

サービスポジティブネガティブ
わかーる6900「母が動くとすぐ受信機で確認でき助かる」「ペット無し環境なら誤報少ない」「本体が高価」「鉄筋住宅では無線が届きにくい」
ココセコム「外出・帰宅通知が便利」「オペレーターが心強い」「月額+通話料金でコスト高」「屋内精度は期待できない」
どこかなGPS 2「設定が簡単で使いやすい」「通知精度は概ね良好」「位置がざっくりでルート再現は弱い」
あんしんウォッチャー「精度が高く安心」「電話サポートが丁寧」「端末が思ったより大きい」「登録作業がやや複雑」「バッテリー残量がアプリ表示不可」
みまもりタグ「タグが軽く電池長持ち」「ボランティア網で捜索協力可」「20 m圏外では検知できない」「受信機を複数置かないと死角が出る」

事例紹介:田中さん宅のセンサー活用ケース

田中さん(75歳男性・要介護2)は、認知症の症状で夜間に居室とリビングを行き来し、転倒リスクが高まっていました。娘の美咲さん(45歳)は、赤外線センサー2台とBLEゲートウェイ1台を組み合わせ、自宅内の「居室入口」と「廊下中央」に設置。センサーが動きを検知すると、スマホにプッシュ通知とSMSが同時送信されるため、美咲さんは夜間でもすぐに状況を把握できます。

導入後3ヶ月で、夜間の転倒アラートは合計5回発生し、その都度美咲さんが駆けつけることで大事に至らずに済みました。「以前は夜中の物音に飛び起きて不安でしたが、導入後は通知を待つだけでよくなり、睡眠の質も改善しました」と美咲さん。費用は初期約30,000円、月の通信費用はWi-Fi利用でほぼゼロ。運用もスマホ操作のみで手間がかからず、「家族みんなが安心して眠れるようになりました」と高評価を得ています。

まとめ

徘徊検知センサーは、方式ごとに特徴と得意領域が異なります。赤外線は屋内のシンプル見守りに最適で、低コスト・低ランニングが魅力。GPSは広範囲外出把握に強いものの、通信費とバッテリー管理が必要です。BLEは屋内位置特定に優れ、タグとゲートウェイを増設しやすい反面、設置調整やチャネル設定に専門的な知見が求められます。

導入前には、電源・ネットワーク環境、アプリ連携・アラート方法、保守サポート体制の3点を重点的に確認しましょう。田中さん宅のように、適切な方式を組み合わせることで万が一を早期発見し、家族の安心感が大きく向上します。

各家庭の間取り・予算・介護スタイルに合わせ、自宅に最適な見守りIoT機器を選び、安心・安全な在宅介護環境を実現してください。