洗濯乾燥機は生活をぐっと楽にしますが、電気代が気になって使い方をためらうこともあります。まずは漠然とした不安を数字に置き換えることから始めましょう。自宅の使い方で一回いくら、月いくらかかっているのかを計算し、必要なら実測で確かめます。そこから、きょうからできる運用改善、浴室乾燥機や除湿機との使い分け、買い替えの回収年数の出し方へと進めば、迷いが減り行動に移しやすくなります。最後に、家全体の常時使っている電気を見直す流れも紹介します。読み進めながら、一つずつ試していけば大丈夫です。
最初に全体感をつかむため、代表的な目安レンジを示します。ヒートポンプ式は1回25〜40円程度、ヒーター式は1回35〜60円程度がよくある水準です。週5回使うと、ヒートポンプ式で月500〜1,200円、ヒーター式で月700〜1,800円が目安になります。ここでの単価は31円/kWhを前提とした概算です。詳細は後述の計算と実測で自宅の条件に置き換えてください。参考にできるメーカーの試算ページも後で示します。
(参考:パナソニック公式 洗濯乾燥機コストシミュレーション)
このあとに進む順番は次のとおりです。まず見える化、次に即効対策、その後に比較と買い替え判断、最後に常時使っている電気の見直しです。
一回と月間の電気代を自分で見える化する

ここが出発点です。電気代は使う頻度や衣類の量、乾燥方式、室内環境で変わります。計算でおおよその当たりを付け、余裕があれば実測で確認しましょう。数字が見えると、次のアクションが選びやすくなります。
簡易計算のやり方
用意するのは電力単価と一回の消費電力量の見込みです。電力単価は検針票や契約プランに載っています。消費電力量は取扱説明書の仕様値やメーカーの試算ページを目安に置きます。ヒートポンプ式は低消費、ヒーター式は高消費になりやすいという特徴を覚えておくと、初期の見積もりが立てやすくなります。
(参考:パナソニック公式 洗濯乾燥機コストシミュレーション)
計算式は単純です。
- 一回の目安=消費電力量×電力単価
- 月間の目安=一回の目安×月間回数
- 月間回数=週回数×4
例として、消費電力量1.0kWh、電力単価31円/kWh、週5回なら、一回31円、月間620円です。ここでの消費電力量は仮置きです。自宅の機種や衣類量で置き換えてください。メーカーの試算を参照すると、自宅の条件と比較しやすくなります。
(参考:パナソニック公式 洗濯乾燥機コストシミュレーション)
家庭差のレンジも意識しましょう。衣類量が多い、厚手が多い、湿度が高い、フィルターが詰まりがち、といった要因があると同じ方式でも消費電力量は増えます。逆に、脱水を強める、厚手と薄手を分ける、容量を守るといった基本を押さえると、同じ機種でも数字は下がりやすくなります。
実測の手順
より確からしい値を得るには実測が最短です。スマートプラグやワットチェッカーを本体とコンセントの間に挟み、運転開始から終了までの消費電力量を記録します。乾燥のみモードがあるなら洗濯と分け、条件をそろえて3回以上測り平均を取りましょう。測定が難しく感じるかもしれませんが、手順はシンプルです。
手順
- コンセントと本体の間に計測器を接続する
- 普段どおりの条件で運転する
- 終了時の消費電力量をメモする
- 条件をそろえて3回測り平均を取る
記録テンプレ
- 日付
- モード名
- 衣類量の目安
- 乾燥時間
- 仕上がりの状態
- 消費電力量
- 一回の金額=消費電力量×電力単価
測定の注意
- 延長コードの許容電流を超えない コンセント周りの発熱に注意 小さな子どもが触れないように配慮
- 取扱説明書の安全注意に従う
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つまずきと回避策
乾かない、時間がかかると感じたら、原因の多くは基本動作にあります。脱水不足は含水率が高くなり乾燥時間が直線的に伸びます。高速脱水や脱水時間の延長で改善します。フィルターの詰まりは風路が狭まり効率を落とします。乾燥フィルターは毎回、熱交換器は取扱説明書の頻度で清掃しましょう。
(参考:パナソニック公式 ドラム式と縦型の選び方と省エネの考え方)
過積載は内部の空気の通り道を塞ぎます。容量の7割前後を目安に、厚手と薄手は分けて乾かすと風が通り、ムラが減り、時間も短くなります。室内湿度が高いときは、換気や短時間の除湿を併用すると立ち上がりが改善します。こうした基本を押さえるだけで、一回あたりの電気代は着実に下がります。
今日から下げる運用改善の最短手順
改善は難しいテクニックではなく、日常の小さな工夫の積み重ねです。ここでは効果の出やすい順に紹介します。一度に全部は難しくても、上から3つ実行するだけで手応えが出るはずです。
乾燥時間を短くするコツ

脱水強めの活用
乾燥工程の電力は衣類に残った水分に比例して増えます。脱水を強めるだけで乾燥時間が短くなり、電力の入口を絞れます。高速脱水や時間延長を試し、仕上がりが変わらない範囲で設定を見直します。
厚手と薄手を分ける
厚手に合わせて全体の運転が延びるのを避けます。厚手だけ少量で運転すると、風が通りやすく時短になります。バスタオルは枚数と量を意識し、必要なら2回に分けます。
最適量を守る
容量の7割前後を目安にします。入れすぎると空気の通り道がふさがり、乾きにムラが出てやり直しの原因になります。入れすぎないこと自体が節約です。
予乾で時短
扇風機や除湿機で10〜20分だけ予乾すると、乾燥機投入後の時間が短くなることがあります。梅雨や冬の湿度が高い時期に特に有効です。
機器メンテと設定の見直し
フィルター清掃
乾燥フィルターは毎回、熱交換器は取扱説明書に沿って定期的に清掃します。わずかな詰まりでも効率は目に見えて落ちます。
(参考:パナソニック公式 ドラム式と縦型の選び方と省エネの考え方)
仕上がり設定の見直し
高温長時間は仕上がりは安定しますが、電気代は増えます。標準設定で足りるか、一度戻して試しましょう。標準で衣類ダメージも抑えやすくなります。
予約運転の活用
家事の流れに合わせて予約し、やり直し運転や放置による再乾燥を減らします。時間帯別料金を利用している場合は、単価の低い時間に合わせるだけでも効果があります。時間帯別料金の導入や水準は地域や事業者で異なるため、ご契約の電力会社のプラン条件を確認してください。
電気料金の工夫
時間帯別料金がある家庭なら、単価の安い時間帯に運転を寄せるだけで月数百円規模の削減になることがあります。電気料金には基本料金と従量料金のほか、燃料費調整や再エネ賦課金などが含まれるため、請求明細や電力会社のサイトで現在の単価と適用条件を確認しましょう。家庭のエネルギー消費の構成は冷暖房や冷蔵庫などの比率が大きく、衣類乾燥の負担は使用頻度や環境で増減します。全体像の把握には政府の統計が役立ちます。
(参考:資源エネルギー庁 エネルギー白書 第2節 部門別エネルギー消費の動向)
浴室乾燥機と除湿機の比較と使い分け
洗濯乾燥機だけでなく、浴室乾燥機や除湿機を使う選択肢もあります。方式ごとに電気の使われ方が異なるため、状況に合わせるとコストも時間も整えやすくなります。
ランニングコストの考え方
洗濯乾燥機
ドラム内という狭い空間で衣類に直接温風や除湿を当てます。熱や乾いた空気が衣類に集中しやすく、条件が安定すると効率が上がります。ヒートポンプ方式は低温で湿気を取り除くのが得意で、ヒーター方式は高温で一気に乾かすのが得意です。
浴室乾燥機
広い空間全体を温めて乾かします。空間が広いぶん時間が長くなりやすく、浴室の断熱や換気性能の影響も受けやすいです。冬は立ち上がりの熱損失も増えます。
除湿機
衣類の近くに乾いた空気を循環させ続ける方式です。サーキュレーターを併用すると風が行き渡り、乾燥ムラが減ります。部屋全体を温める必要がないため、条件が合えば効率よく仕上がります。
コスト感の一例として、事業者の解説では洗濯乾燥機の月間電気代は1,071〜1,842円程度という紹介があります。方式や衣類量、環境で幅があることに注意してください。
(参考:大阪ガス 洗濯乾燥機の電気代コラム)
条件別の使い分けシナリオ
梅雨の夜にTシャツ2kgを乾かしたい
短時間で8割まで洗濯乾燥機で乾かし、残りを除湿機とサーキュレーターで仕上げると、時間と電気のバランスが取りやすいです。扇風機でも代用できます。
冬の夜にバスタオル4kgを乾かしたい
ヒートポンプ式の短時間運転と強めの脱水でスタートし、仕上がりを見て延長する方が、浴室乾燥で空間を温め続けるより省エネになりやすいです。
花粉の時期で外干ししたくない
生地ダメージを抑えたいなら、高温長時間を避け、厚手と薄手を分けて標準設定で乾かします。匂いが気になるときは、温風でしっかり乾かすか、除湿の風当てを十分に行います。
賃貸で浴室乾燥機の能力が控えめ
除湿機を衣類に近づけ、サーキュレーターで風を循環させると、仕上がりが安定します。風の当て方を壁に沿わせるなど、空気の巡回経路を意識すると時間短縮につながります。
買い替え判断の基準と回収年数の出し方

運用の工夫で満足できない、あるいは機器が古くてメンテ頻度が高い場合は、買い替えでどれだけコストが下がるかを見積もると判断がしやすくなります。ここでは計算の枠組みと入力テンプレ、そして感度の考え方を紹介します。
方式別の特徴と設置要件
ヒートポンプ方式
低消費電力で衣類にやさしく、温度上昇が穏やかです。仕上がり時間がやや長く感じる場合があります。本体のサイズと重量が大きめで、搬入経路や設置スペースの確認が必要です。
ヒーター方式
立ち上がりが速く、短時間で乾かせますが、消費電力量は増えやすいです。排気や熱のこもりに注意し、結露対策も合わせて検討します。
容量と仕上がり
容量が大きいほど一度に乾かせますが、入れすぎは逆効果です。風の通りを確保し、厚手と薄手を分けることが時短につながります。
回収年数の入力テンプレと計算例
- 電力単価:31円/kWh(パナソニック公式シミュレーションで使用されている基準値)
- 週回数:5回
- 現機:ヒーター式1.2kWh/回(例)
- 新機:ヒートポンプ式0.8kWh/回(例)
- 本体価格差:70,000円
計算例
年間差額=(1.2−0.8)×31円×(5×52)=32,240円
回収年数=70,000÷32,240≒2.2年
このように消費電力量の差を基準にすると、家庭の使用頻度や電力単価に応じた回収年数を概算できます。
パナソニック公式のシミュレーションページでも、電力単価31円/kWhを前提に方式や条件による電気代の違いが試算できます。
(参考: パナソニック公式「洗濯乾燥機コストシミュレーション」)
感度の考え方
電力単価が高いほど、消費電力量の差が年間の差額に大きく効き、回収年数は短くなります。使用回数が多い家庭も同様です。逆に、週2回など回数が少ない家庭では年間差額が小さくなり、回収年数は長くなります。運用改善で乾燥時間が短縮できるなら、買い替えを先送りする選択も合理的です。買い替える場合は、保証とサポート、フィルター清掃のしやすさ、搬入経路、設置寸法、専用回路の要否、床の耐荷重など、使用中の困りごとに直結する条件を事前にチェックしておくと後悔しにくくなります。
常時使っている電気の見直しと無料診断への導線
洗濯乾燥機の最適化で効果が出始めたら、家全体の常時使っている電気も見直すと、削減幅が上乗せされます。洗濯乾燥の削減は、一部門の改善にすぎません。冷蔵庫や給湯、通信機器、照明、暖房便座など、毎日つけっぱなしの機器や待機電力の積み重ねが、月の電気代のベースを形成しています。ここを整えると、季節や天候に左右されにくい安定した効果が出ます。
兆候チェック
在宅時間が長い 冷蔵庫や給湯機が古い 待機電力の多い機器が多い WiFiや周辺機器が24時間稼働 時間帯別プランを使っていない スマートプラグで測ったことがない ブレーカー単位で見える化していない
1週間の進め方
1日目 主要家電の型番と使用パターンをメモ
2日目 通信機器や待機電力を測定
3日目 洗濯乾燥の実測
4日目 照明や暖房便座など常時通電機器の確認
5日目 料金プランと在宅時間の整理
6日目 削減案の実行
7日目 再計測と見直し
週4回以上×ヒーター方式の家庭では、脱水強化、厚手と薄手の分離、容量の見直しだけでも月200〜400円の削減に届く可能性があります。診断を使えば、ご家庭の条件に合わせた削減幅をより現実的に把握できます。
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よくある質問
- Q一回の電気代の目安はどのくらいか
- A
方式や衣類量で変わります。メーカーの試算では、標準的な乾燥モードで1回あたり数十円の水準が多いです。自宅の条件で消費電力量×電力単価を計算するか、実測で確かめるのが確実です。
(参考:パナソニック公式 洗濯乾燥機コストシミュレーション)
- Q乾燥だけの電気代を知るにはどうするか
- A
乾燥のみモードがあれば分けて計測します。ない場合は同条件で複数回測り、乾燥時間と消費電力量の関係を把握します。スマートプラグやワットチェッカーが役に立ちます。
- Qドラム式と縦型で電気代は違うのか
- A
ドラム式は少ない水量で洗えるため省エネに寄与しやすく、ヒートポンプ方式の乾燥で電力を抑えやすい傾向があります。縦型は水量が多く、乾燥はヒーター方式が多いなどの違いがあります。
(参考:パナソニック公式 ドラム式と縦型の選び方と省エネの考え方)
- Q夜間に運転すると得なのか
- A
時間帯別料金を採用している電力会社では夜間単価が低いことがあり、該当プランに加入している家庭では夜間運転が有利になりやすいです。就寝時の騒音や安全面を考慮し、契約条件を確認してください。
(参考:資源エネルギー庁 エネルギー白書 第2節 部門別エネルギー消費の動向)
- Qフィルター清掃の頻度はどのくらいか
- A
乾燥フィルターは毎回、熱交換器は取扱説明書に沿って定期的に清掃します。清掃性は機種選びの重要な比較点です。
(参考:パナソニック公式 ドラム式と縦型の選び方と省エネの考え方)
この記事の前提と更新方針
本記事の計算例は電力単価31円/kWhを基準にしています。地域や契約によって単価は異なるため、あくまで目安としてご覧ください。