漏れ不安解消へ!やせ型体型向けサイズ選びと隙間を埋めるパッドのコツ

介護DX

要介護者や介護をしている方にとって、おむつからの尿モレは心身ともに大きな負担となり、ご本人の尊厳に関わるデリケートな問題です。特に、加齢に伴う筋力の低下や、やせ型の体型により、ウエストとヒップのサイズ差が大きい方は、おむつと身体の間に隙間ができやすく、モレに悩まされがちです。

この問題の解決には、おむつが合っていないという根本原因を見極め、適切なサイズ選びの原則を知り、さらに特殊な補助パッドを活用して身体の隙間を埋める技術を身につけることが重要です。

誰もが陥りがちな間違った漏れ対策の落とし穴

尿モレが続くと、不安から「吸収量を増やそう」と尿とりパッドを何枚も重ねてしまう方が多くいますが、これは逆効果です。

尿とりパッドの裏面には防水フィルムがついているため、重ねて使用しても、下のパッドまで尿が流れて吸収されることはありません。吸収量は足し算にはならず、かえってモレを誘発する百害あって一利なしの間違った使用方法です。

パッドを重ねることで、厚みが増してしまい、おむつと身体の間に新たな隙間や溝ができやすくなります。また、モレを防ぐための立体ギャザーが押しつぶされて防波堤の役割を果たせなくなったり、股間部分が押し広げられて足を閉じるのが難しくなったりし、スキントラブルや睡眠を妨げる原因にもなります。

尿とりパッドは、使用する排泄量にあったものを必ず1枚で使用しましょう。

やせ型体型のためのサイズ選び

おむつからのモレを防ぐには、まず身体にぴったりフィットしたサイズを選ぶことが絶対条件です。サイズが大きすぎると身体とおむつの間に隙間ができ、モレのリスクが高まります。

やせ型体型の方は、このサイズ選びにおいて特別な注意が必要です。

パンツタイプのおむつ(外側のおむつ)の選び方

一人で歩ける方や介助があれば立てる方にはパンツタイプが推奨されます。

  • サイズ基準はウエスト
    パンツタイプのおむつは、ウエストサイズを目安に、ぴったりのサイズを選びます。
  • やせ型体型の黄金律
    まずはロング丈など脚まわりフィット設計のパンツや、当て方(ギャザーの立て直し・クロス止め)で調整し、それでも隙間が残る場合に限ってサイズ変更を検討します。締め付け痕が残る、苦しさや痛みが出るサイズは避けてください。
  • 婦人服との違い
    大人用紙おむつのサイズ表記は男女兼用のものが多く、普段着ている婦人服のサイズ設定とは範囲表示が大きく異なります。例えば、婦人服でLサイズを着ている方でも、おむつのサイズではMサイズにできる可能性が高いです。

テープ止めタイプのおむつの選び方

寝て過ごす時間が多い方にはテープ止めタイプがおすすめです。やせ型体型で隙間モレが主な悩みであるならば、調整能力に優れているテープ止めタイプを選択することが、問題解決への確実な道筋となる場合もあります。

  • サイズ基準はヒップ
    テープ止めタイプのおむつは、ヒップサイズを目安に選びます。おしりの最もふくらんでいる部分の周囲を測りましょう。
  • フィット感の目安
    ぴったりすぎると痛みや皮膚トラブルの原因になるため、ウエストや足の隙間は指1本が入るくらい余裕があるのがベストです。

モレを防ぐ装着の基本技術とクロス止め

適切なサイズを選んでも、装着方法が正しくなければモレてしまいます。特にやせ型体型では、足まわりの立体ギャザーとテープの止め方が重要です。

立体ギャザーを活かす

おむつからのモレを防ぐ最も大事な要素は、尿や便をブロックする立体ギャザーをしっかり立たせることです。

  • ギャザーを立てる
    おむつ交換の際には、おむつの両端を持ち、縦に2〜3回優しく伸ばすことでギャザーが立ち上がります。
  • 鼠径部にフィットさせる
    おむつや尿とりパッドは、ギャザーが鼠径部(そけい部、足の付け根)に沿うようにぴったりフィットさせ、内ももの皮膚のたるみをおむつの外へ出すことが重要です。ギャザーが内側に折り込まれていないか、指でぐるっと一周させて確認しましょう。

テープ止めタイプで隙間をなくす

テープは左右対称が基本。脚まわりが細い場合は“下テープを斜め上”、お腹が細い場合は“上テープを斜め下”に止めると隙間が埋まりやすくなります(引っ張り過ぎに注意)。

やせ型体型の方がテープ止めタイプを使う場合、体型に合わせてフィット感をカスタマイズできるクロス止めの技術がモレ防止の鍵となります。

テープは左右対称に止めることが基本ですが、特に脚まわりの隙間対策には、以下の「斜め止め」を行います。

  1. 下のテープの調整
    下のテープ(股ぐり側)を斜め上向きに引き上げるようにして左右両方を止めます。これにより股ぐりの布地が引き締まり、足まわりの隙間が無くなり、そけい部にぴったりフィットします。
  2. 上のテープの調整
    上側のテープ(腰まわり側)は、股間に向かって斜め下向き(逆ハの字)に止めることで、お腹周りがしっかりと固定され、ウエストのゆるさを調整できます。

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尿とりパッドの正しいセット位置

尿とりパッドは必ず外側おむつの立体ギャザー内側に収めます。

尿とりパッドを併用する場合、パッドは必ず外側のおむつ立体ギャザーの内側に収まるようにセットしてください。パッドがおむつのギャザーを押しつぶしてしまうと、モレの原因になります。

やせ型体型の「隙間」を埋める特殊パッド活用術

両面吸収シートは隙間を物理的に埋めるための充填材。表裏どちらからも吸って、余剰は下の本体に透過します。単独では使わず、必ず紙おむつや尿とりパッドと併用します。

特殊パッド(両面吸収シート)とは

この特殊パッドは、一般的に「両面吸収シート」や「補助シート」、「重ねて安心シート」などの名称で販売されています。

  • 機能
    最大の特徴は、防水シートがないことです。これにより、シートの表裏どちらからでも尿を吸収し、さらに吸収しきれない分を、下にある本体のおむつや尿とりパッドへと透過させる(流し込む)ことができます。
  • 主目的
    これらのシートの真の目的は、吸収量を増やすことではなく、折ったり丸めたりして、要介護者の身体のくぼみ、特にそけい部や腰、脇腹などとおむつの間にできる隙間を物理的に埋める、いわば吸収性のある「パッキン」や「ガスケット」のような役割を果たすことです。

隙間を埋めるための具体的な使い方(女性編)

やせ型体型の女性の場合、鼠径部(そけい部)からモレやすい傾向があります。

  1. 蛇腹折り/ロール状にする
    両面吸収パッドを4つくらいの簡単な蛇腹折りやロール状にします。
  2. 密着させる
    その蛇腹状にしたパッドを縦に、尿道口にぴったり密着するように当てます。
  3. ギャザーで被せる
    この特殊パッドは、下に当てた尿とりパッドの立体ギャザーで被せるように装着します。最後に外側から軽く握るようにしてフィットさせると完成です。

この方法により、パッドと身体の間に隙間ができず、尿が隙間を伝ってモレるのを防ぎ、パッドが尿を確実に下の本体パッドへ誘導します。

また、足が開きにくい拘縮がある方でも、パッドを山折りにすることで、両足の間を通しやすくなり、しっかりと当てることができます。

特殊パッドの製品例

主要メーカーから、やせ型体型の隙間対策に有効な補助パッドが発売されています。

特殊パッド使用時の注意点

特殊パッド(両面吸収シート)には防水フィルムがついていないため、必ず防水フィルムのある紙おむつまたは尿とりパッドと併用してください。

モレが続く場合のチェックリストと製品の見直し

サイズ選びや当て方を工夫してもモレが続く場合は、製品の吸収量や種類の組み合わせが合っていない可能性があります。

吸収量と交換頻度の見直し

モレの原因がおむつの吸収量が排尿量を超えていることにある場合、製品そのものを見直しましょう。

  • 吸収量を確認する
    おむつやパッドに記載されている「排尿回数回分」という表記は、1回の排尿量を150mlとして算出されています。
  • 夜間や長時間使用の対策
    こまめに交換できないときや夜間・一晩中使用するときは、吸収量の多い長時間用や夜用の製品(5回分〜8回分以上など)を選びましょう。

パッドとおむつの組み合わせの再確認

おむつは、外側のおむつ(アウター)と内側のパッド(インナー)を組み合わせて使用するのが一般的です。

  • 組み合わせの原則
    外側のおむつの種類に合わせてパッドを選びます。立ったり歩いたりする方向けのパンツタイプには紙パンツ用パッド、寝て過ごすことが多い方向けのテープ止めタイプにはテープ用パッドを合わせます。
  • 経済的なメリット
    パッドを併用することで、パッドのみの交換で済み、おむつ交換の介護負担や経済的負担の軽減につながります。

男性は陰茎の向き(基本は下向き)とパッドの向きを確認すると、横モレが減ります。

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吸収量重視の単体使用を検討する

何を試してもモレが改善しない場合は、パッドがわずかでも厚みとなり隙間を作っている可能性を考慮し、吸収量が多い外側の紙おむつ1枚だけで使用することを検討してみましょう。夜用や長時間用のパンツタイプには、パッドを使わずに朝まで安心できる吸収量の製品もあります。

やせ型・細身に特化した製品の活用

各メーカーは、細身の方や足まわりに隙間ができやすい方のための工夫を凝らした製品を開発しています。

  • テープ止めタイプの細身向けサイズ
    リフレの簡単テープ止めタイプ横モレ防止には、小柄な方や極端にやせている方に適したSSサイズ(ヒップサイズ50cm~85cm)があります。
  • パンツタイプのフィット技術
    ライフリーのパンツシリーズには、すきまピタッとギャザーや背中・足ぐりピタッとギャザーといった特許技術が搭載されており、身体のラインに沿ってフィットし、隙間ができにくいように設計されています。また、アテントには脚まわりのフィット感を高めるロング丈形状のパンツタイプもあります。

モレのない安心を手に入れるための包括的ルーティン

モレ不安を解消し、快適な生活を取り戻すには、正しい知識に基づいた一貫したケアのルーティンを確立することが鍵となります。

快適な排泄ケアのための心得

排泄ケアは、介護を受ける方の「生きることのプライド」に関わる非常に大事な問題です。

  • ご本人の視点を重視する
    おむつが合っていても、陰部の痒みや不快感でご本人がおむつをずらしてしまうことでモレることもあります。ご本人の気持ちや違和感を見落とさず、向き合うことが問題解決の糸口になります。
  • こまめな交換と衛生保持
    皮膚トラブルや褥瘡(床ずれ)の原因となるため、尿や便が出たらできるだけすぐに替えるようにしましょう。
  • 衛生とプライバシー
    おむつ交換時には、陰部を清潔に保つこと(特に女性は前から後ろへ拭き、感染予防に努める)、そしてプライバシーに配慮し、必要以上に陰部を露出しないようタオルなどで隠す配慮も大切です。

悩みが解決しないときは相談を

おむつ交換やモレの悩みが解決しない場合は、一人で抱え込まず、専門機関に相談することも大切です。花王リリーフのふれあいダイヤルなど、メーカーの専門相談員は、体調や介護の状況を伝えると、その方にぴったりのおむつ選びや使い方をアドバイスしてくれる事例もあります。

正しいサイズ、正しい当て方、そして特殊パッドの活用は、やせ型体型の方のモレ不安を解消し、介護する側・される側双方の負担を軽減する確かな道筋です。これらの知識を活用し、日々のケアを快適なものにしていきましょう。

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