スマホは持っているのに便利な機能を使わないなんてもったいない! 60・70代が安心してデジタルを味方にする5つのヒント

シニアFinTech

はじめに

いまやスマートフォンは「持っていて当たり前」の時代です。実際、60代では9割以上、70代でもおおむね7割近い方がスマホを所有しています。ところが、「電話とLINEだけ」「カメラしか使わない」という声を耳にします。せっかくポケットに小さなパソコンを忍ばせているのに、振り込め詐欺のニュースを見るたびに「やっぱり現金がいちばん安全かな」と不安を感じてしまい、デジタル離れを起こしてしまう。そんなデジタル離れによって、デジタルデバイド(情報格差)が起こります。

その理由は、単純な操作の難しさだけではありません。

  • 「暗証番号を覚えきれない」「指が震えてタップしづらい」といった身体的な変化
  • 「ボタンを押し間違えて大事なお金を失ったらどうしよう」という心理的な不安
  • 「通帳で十分間に合っている」という、ある意味で合理的な生活スタイル

こうした複数の壁が重なり合い、使わない方が楽という選択に至ってしまいます。しかし視点を変えると、スマホやインターネットは暮らしを守る便利なツールにもなり得ます。

  • 大雨の避難情報や地震速報を、紙の回覧板より早く受け取れる
  • 病院の予約や薬の受け取りを、待たずに済ませられる
  • 家族が遠くに住んでいても、口座の動きを一緒に見守れる
  • ATMに並ばず振り込みでき、手数料を節約できる

つまりデジタルは「怖いもの」ではなく、うまく使えば転ばぬ先の杖になります。本記事では、まず使わない理由を整理し、そのうえで以下5つのヒントを紹介します。

  1. 見やすく押しやすい画面づくり
  2. 顔や指紋で済む安全な認証
  3. 何度聞いても怒られないAI&人のサポート
  4. 家族で支え合う最新アプリ
  5. 今日からできる小さな一歩

「スマホは難しそう」と感じている50代・60代・70代の皆さんも、読み終えるころには「これなら私にもできそう」と思っていただけば幸いです。

なぜ「デジタルを使わない」を選ぶのか?3つの壁

心理的不安、技術的不慣れ、必要性の低さといったデジタルの利用障壁は、誰にでも起こり得る現象です。大事なのは「壁がある」と自覚したうえで、少しずつ障壁をクリアする手段に手を伸ばすことが重要です。

心理的な不安

スマホやネット銀行には、便利さと同時に「詐欺にあうかも」「個人情報が抜かれるかも」という不安がつきまといます。実際、ニュースでは「オレオレ詐欺」や「フィッシング詐欺」の話題が絶えません。「使い慣れた現金や通帳で十分」と感じるのは、ごく自然な自己防衛反応です。また、専門用語が多い画面を見るだけで「自分にはムリ」と身構えてしまいます。これも「知らない=危険」と判断する、人間の本能的な仕組みと言われています。

ポイント

  • 「怖い」と感じるのは正常な感覚。恥ずかしがる必要はありません。
  • 実は生体認証や少額決済の上限設定など、紙より安全な仕組みも増えています。怖さをゼロにするカギは「設定のコツ」と「家族・専門家のサポート」を知ることです。

不慣れな操作

次に立ちはだかるのが端末の操作問題。タップするボタンが小さくて押し間違える、画面が突然切り替わって元に戻れない、暗証番号を忘れてしまう。こうした体験が重なると「やっぱり私はデジタルに向いていない」と自信をなくしてしまいます。ところが近年は、この壁を下げる技術が急速に進化しています。例えば以下のようなものがあります。

  • 大きな文字・見やすい色が標準のシンプル設定
  • 顔・指紋・声で本人確認ができ、暗証番号が要らない生体認証
  • 画面を見せながら遠隔で教えてくれるリモートサポート
  • 「◯◯したい」と話すだけで手順を表示してくれるAI案内

ご自身の好きな方法を組み合わせることによって、操作面の負担は激減します。機種変更や初期設定は、量販店・携帯ショップの無料サポートを活用しましょう。初期設定の時間はかかりますが、以降の便利さを考えると時間をかけるべき内容です。

必要性がないと感じている

「近所の銀行も郵便局も歩いて行ける」「手帳に出費を書けば十分」といった生活リズムが確立していると、新しい操作を覚える意義が小さいと感じてしまいます。ところが環境は少しずつ変わっています。

従来これから
紙の通知・振込用紙オンライン限定割引、窓口手数料アップ
現金支払いキャッシュレス決済でポイント還元・小銭不要
役所に並んで申請スマホで申請→郵送受取、待ち時間ゼロ

また、災害時にはテレビよりスマホの緊急速報の方が早く届く場合もあります。つまり、今は困っていないが、いざという時に困るリスクが年々高まっているのです。デジタルは「便利さ」だけでなく「保険」にもなるということです。小さな成功体験(例:振込手数料が無料になった、健康ポイントが貯まった)が利用障壁をクリアする最短ルートです。

デジタルに踏み出すと得られる3つの安心

「難しそうだな」と感じても大丈夫です。最初の一歩は、アプリを1つインストールしてみること。安心は“やってみる”ことから始まります

「知らない間の引き落とし」を防ぎ資産を守る安心

こんな経験はありませんか?
「通帳を記帳してみたら、覚えのない振り込みがあった」
「カード明細を確認せず、後でまとめて請求額に驚いた」

スマホの銀行アプリや「見守りサービス」を使うと、こうしたヒヤリを早めに察知できます。

  • 入出金アラート
    • 1万円以上の引き出しや夜間の送金を即メールで通知。
    • 異常な動きに気づけば、その場で口座を一時停止できる。
  • 支払い上限の設定
    • クレジットカードは「1日○円まで」と上限を決められる。
    • ネットショッピングも“使いすぎ”を未然に防止。
  • 顔認証・指紋認証
    • 暗証番号を紙にメモする必要なし。
    • 財布を落としても、スマホが本人確認の鍵になる。

これらの機能を使う結果として、知らない間に資産を失う最大のリスクが減少します。家族をアプリに招待し、口座残高だけ共有しておけば、離れて暮らす親子とダブルチェックすることが可能です。誰かと一緒に守る仕組みが安心の土台になります。

いざという時の情報収集と共有ができる安心

スマホは、もはや電話代わりだけではありません。災害や急病など「時間との勝負」の場面で、大切な命綱になります。

  • 緊急速報
    • 大雨・地震・津波などの警報がテレビより数分早く届く。
    • 避難場所の地図も併せて表示されるため、土地勘がなくても行動しやすい。
  • ビデオ通話
    • 子や孫の顔を見て話せるだけでなく、体調を伝える時も表情で理解してもらえる。
    • 離れて暮らす家族が顔色チェックできることで安心感が高まる。
  • LINEや防災アプリの既読確認
    • メッセージが既読になれば無事だと一目でわかる。
    • 返信が難しい状況でも、生存確認ができる仕組みは心強い。

アナログの手段では届きにくい情報を素早くキャッチし、家族や地域とつながる。取り残されないという安心は、デジタルだからこそ得られるメリットです。

健康と暮らしを支える安心 ――「毎日を少しラクに、ちょっと楽しく」

デジタル活用はお金や安全だけでなく、日々の暮らしそのものを軽くします。

従来の手間デジタルでの変化
病院の受付で行列スマホで予約 → 到着後すぐ診察
お薬手帳を忘れるアプリで自動記録・服薬アラーム
家計簿を手書きレシート撮影で自動集計、無駄遣いを見える化
ウォーキングの歩数メモスマホが自動計測、達成バッジで楽しさUP

さらに最近は、銀行アプリに健康機能が付く例も増えています。歩数や体重を入力するとポイントが貯まり、商品券や手数料割引と交換できる仕組みも。家計と健康を一緒に管理できるので、続けるモチベーションが上がります。利用障壁をクリアするためには小さな成功体験が必要です。

  • 「アプリで診察券を出したら待ち時間が半分になった」
  • 「歩数が1000歩増えてポイントがたまった」

こうした喜びが、次のチャレンジへの原動力になります。

不安を解消するテクノロジーの有効活用

「小さくて読めない」「パスワードが不安」「聞く人がいない」といったデジタル利用の障壁は、テクノロジーと少しの準備でほぼ解消できます。

見る・押すがラクになる「ユニバーサル画面」

スマホの操作でいちばん多いつまずきは「小さくて読めない」「指がずれる」といった点です。そこで多くの銀行や行政アプリがユニバーサルデザインモードを搭載しています。

  • 文字サイズは新聞見出し並み(18〜20pt)
  • コントラストを強調し、重要ボタンは濃い色で統一
  • 戻る/進む/確定だけを画面下に大きく固定

これだけで「あれ?押し間違えた?」というドキッが激減します。設定は[設定]→[表示]→[簡単モード]をオンにするだけ。まずはホーム画面のアイコンを2列にするところから試してみましょう。

生体認証を使い暗証番号なしで本人確認

「パスワードが多すぎて覚えられない」は誰もが抱える悩み。そこで頼りになるのが生体認証です。

認証方法強み困った時
顔認証マスクを外せば一瞬眼鏡を替えたら再登録
指紋認証寝起きでもOK指が乾燥したら顔認証に切替
声認証手が塞がっていても使える風邪声の時はPINを併用

ポイントは「複数登録」と「代替ルート」。顔がうまく読めない日は指紋へ、どちらも難しい時は4桁のPINで突破、のように逃げ道を用意しておけば認証で苦労する心配がありません。設定画面の指示に従い、明るい場所で3回ほどカメラを向けるだけで登録完了です。

何度聞いても怒られない「AIアシスタント」

「このボタンで合ってる?」と家族に毎回聞くのは気が引けますよね。そんなときはAIチャット/音声ボットです。最近のみずほ証券や一部の自治体アプリでは、「振込のやり方を教えて」と話すと、画面上で該当ボタンを光らせて案内してくれます。言い間違えても「もしかして〇〇ですか?」と聞き返してくれるので、恥ずかしさゼロ。電話型のボイスボットもあり、固定電話感覚で質問できるのが特徴です。

困った時の遠隔サポート機能で担当者と一緒に操作

操作に行き詰まったら、銀行や通信会社の遠隔サポートが便利です。オペレーターが「画面の左下に青い丸が見えますか?」とリアルタイムで指さしながら案内するので、自宅にいながら窓口並みのサポートが受けられます。利用手順はおおむね3ステップ。

  1. アプリで「リモートサポートを開始」をタップ
  2. 6桁の番号を電話口で伝える
  3. オペレーターが接続 → 操作箇所が赤枠で表示

終了後は自動で接続が切れ、画面は相手に保存されません。プライバシー面の不安もクリアです。

テクノロジーを上手に使うコツ

  1. 一度に全部覚えない。まずは文字を大きくするだけでOK
  2. 設定はお店で頼む。量販店や携帯ショップでは無料初期設定を実施
  3. 家族をアプリに招待する。見守り設定は最初に一緒に行うと安心
  4. 週1回デジタルに接触する日を決める。習慣化すれば良さが分かる

家族と使う便利な新サービス

デジタルは個人で完結するサービスだけではありません。家族で連携して使うサービスもあり、詐欺の芽を摘むことや、もしもの時に手続きをスムーズにしたり、離れていても健康と暮らしを見守るようなサービスもあります。

「家族見守りアプリ」でお金の動きを家族でチェック

最近の銀行アプリには、口座の入出金を家族と共有できる機能が増えています。たとえば岩手銀行の〈家族口座見守りサービス〉は、本人の同意を前提に、

  • 残高や引き出し額を家族のスマホへ通知
  • 深夜・高額など「いつもと違う」動きがあれば即アラート

というシンプル設計。遠くに住む家族でも、「さっき大きなお金を動かしたけど大丈夫?」とすぐ声をかけることができます。「見守られている安心」と「詐欺を未然に防ぐ効果」が同時に得られるのが魅力です。始めるステップは次のとおりです。

  1. 通帳を手に支店窓口へ(設定代行が最も確実)
  2. 家族のメールアドレスまたは電話番号を登録
  3. 専用アプリをインストールして完了

登録後でも「通知する金額」「共有相手」はいつでも変更できるため、「ちょっと試してみる」が気軽にできます。

「使いすぎ防止カード」で安心してお買い物

米国発のTrue Linkカードに代表される「支出制限カード」は、日本でも一部のプリペイドカード/デビットカードで利用可能になりつつあります。

  • 1日の利用上限額
  • 使える業種(スーパーはOK、ネットカジノはNGなど)
  • ATM引き出し可否

を家族が細かく設定できます。本人はチャージされた範囲で自由に買い物でき、大きな詐欺や浪費だけをシャットアウトできます。以下が支出制限カードの安心エピソードです。

  • 「ネットで布団を3セット誤発注」→ 上限3万円設定で被害ゼロ
  • 「深夜の通販番組で高額契約」→ テレビ通販をブロックし未然に防止

生活まるごと管理「わが家ノート」アプリ

三菱UFJ信託銀行の「わが家ノート」は、お金・健康・終活情報を1つにまとめ家族で共有できるライフケア・プラットフォームです。

主な機能何がうれしい?
資産メモ・エンディングノートもしもの時に相続手続きがスムーズ
歩数・体調記録運動不足に家族が気づいて声かけ
見守り通知一定期間ログインがないと家族にお知らせ

元気なうちは自分で管理し、体調が落ちたら家族にバトンタッチするという自然な引き継ぎがアプリ1つで実現します。

家族と始める3ステップ

  1. 見守りの範囲を話し合う
    • 残高だけ?入出金も?どこまで共有すると安心?など。
  2. 代表者(支援役)を決める
    • 設定やサポート窓口とのやり取りを担当する人を決める。
  3. 半年ごとに見直す
    • 生活変化に合わせ、通知額や権限を調整する。

ポイントは、本人の同意と柔軟な変更です。これがあれば「プライバシーを守りながら助け合う」バランスが保てます。

よくある疑問Q&A

質問回答
Q. 家族に全部知られるのは抵抗が…通知項目は選択可。残高を伏せて入出金だけ共有、逆に残高だけ共有など自由に設定できます。
Q. カードをなくしたら?アプリから即停止→再発行手続き。電話サポートも24時間受付。
Q. スマホを持っていない家族は?PCメール通知や固定電話の自動音声サービスを選べる例も。窓口で確認を。

今日からできるチェックリスト

チェックリストはどれも10分以内で終わる作業ばかりです。実施することで、

  • 詐欺メールを事前にブロック
  • 通知で家族が変化に気づく
  • 災害警報で素早く避難

といった様々な効果が見込めます。デジタルは難しい講義より、触って慣れるほうが確実に身につきます。まずはチェックリストを確認していただき、今日できる1つから始めてみてください。

デジタル攻略チェックリスト

「まず何をすればいいの?」と迷ったら、下のチェック項目を実行し✓を入れるだけでOKです。
週末の空き時間にひとつずつ試していけば、1か月後にはデジタル攻略がぐっと身近になります。

チェックNoやること目安時間得られる効果
1スマホの文字を“大”にする
設定 → 画面表示 → 文字サイズを+2段階
3分読み間違い・押し間違いが激減
2顔または指紋認証を登録5分暗証番号を覚えずに済み、置き忘れ時も安心
3銀行アプリの「入出金通知」をON
1万円以上/夜間に設定
5分不審な引き出しを即キャッチ
4緊急速報(災害通知)を有効化
設定 → 通知 → 災害・緊急情報をON
2分地震や大雨の警報を最速で受け取る
5地域の無料スマホ教室を予約
銀行・携帯ショップ・市役所で実施
10分プロに直接聞ける相談窓口を確保
6家族見守りアプリをダウンロード
まずは残高のみ共有で試運転
15分詐欺・誤送金のダブルチェック体制
7健康/家計簿アプリを1つ入れる
歩数自動計測かレシート撮影型が簡単
10分ポイントが貯まり、続ける楽しみが生まれる
8利用サービスのAIチャットに質問してみる
例:「振込ってどうやるの?」
5分「何度聞いても大丈夫」という体験で自信UP
9遠隔サポートの電話番号を登録
スマホの連絡先に「★操作ヘルプ」と保存
2分困った時にすぐつながり、待ち時間ゼロ
10半年後のサービス設定見直し日をカレンダーに追加
通知が来たら設定や共有範囲を再確認
2分生活変化に合わせて安心設定をアップデート

実践のヒント

  1. 週1つの項目実施で充分。いきなり全部やろうとせず、日曜の朝に1項目だけが長続きのコツです。
  2. 実施できたら家族に報告。「今日は文字を大きくしたよ」とLINEするだけで見守りと達成感が両立。
  3. うまく行かなくても気にしない。設定に迷ったらステップ5のスマホ教室で質問すればOK。
  4. 便利より安心を優先。アプリ選びで迷ったら「通知設定」「顔認証対応」など安全機能を重視。

まとめ

スマホが「怖い・面倒」と感じるのは、ごく当たり前の反応です。しかし、①心の壁(不安) ②技術の壁(操作) ③意味の壁(必要性)の3つの壁は、ここまで紹介してきたテクノロジー家族との協力によって、障壁をクリアする可能性が高まります。

崩すカギ
入出金通知・顔認証で「万一」を先回り
技術文字拡大・AI案内・遠隔サポート
意味手数料削減・災害速報・ポイント還元

こうして一歩踏み出すだけで、3つのメリットが得られます。

  • お金を守る安心(不審な動きを即キャッチ)
  • つながりを守る安心(緊急時も家族と即連絡)
  • 暮らしを守る安心(病院予約や家計管理がラク)

ポイントはひとりで背負わないこと。残高だけを家族に共有、操作に迷ったら遠隔サポートへ電話、など小さな工夫でプライバシーと安心を両立できます。

最後に、今日からできる“小さな一歩”をもう一度お伝えします。

  1. 文字サイズを大きくする
  2. 顔または指紋認証を登録
  3. 銀行アプリの入出金通知をON
  4. 緊急速報を有効化
  5. 無料スマホ教室を予約

どれか一つに✓を入れて実行するだけで、デジタルへのハードルは確実に下がります。道具は使ってこそ価値が生まれるもの。デジタルは「怖いもの」ではなく、うまく使えば転ばぬ先の杖になります。ぜひ今日から、ご自分とご家族の安心のために、デジタル生活を一歩進めてみてください。

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