電気代が高いと感じられる場合は、仕組みと用語を正しく理解し、今月の条件で「総額」を比べることが近道です。本記事では、料金の決まり方(国の関与を含む)、東京電力の主なプランの仕組みとメリット・デメリット、2025年9月時点の単価、他社との比較の作法、そしてご家庭向けの具体的な見直し手順までを表と手順で丁寧にご説明いたします。読み終わる頃には、今日から始められる一歩と、数か月で効く改善策が明確になります。
そもそも電気料金はどう決まるのか

国の関与と二つの料金系統
電気料金は大きく「規制料金」と「自由料金」に分かれます。規制料金は、電力会社が原価等に基づいて設定し、国(経済産業大臣)の認可を受けて決まります。自由料金は小売全面自由化後に各社が設計するもので、原則として認可は不要です。2023年の大手の認可値上げもこの枠組みで実施されました。
毎月の増減を生む三つの要素
燃料費調整は原油・LNG・石炭の統計価格等に連動し、月ごとに単価が公表されて電力量料金に加減されます。再エネ賦課金は全国一律の年単価で、2025年度は1kWhあたり3.98円が2025年5月検針から2026年4月検針まで適用されています。さらに、2025年夏は物価高対策として1kWhあたりの時限的な値引き(低圧で7月2.0円、8月2.4円、9月2.0円)が実施されています。
※参考:東京電力エナジーパートナー「燃料費調整等のお知らせ(2025年9月分)」
電気料金に関する用語
規制料金とは
規制料金とは、電力会社が「供給約款」という公的なルールに基づいて設定し、国の認可を受けて提供する料金です。
ここでいう「約款」とは、電気を利用する際の契約条件を定めた公的な文書のことを指します。契約単位(アンペアやkVA)、基本料金や電力量料金の単価、割増や割引の条件、燃料費調整の上限などが細かく記載されています。
たとえば東京電力の「従量電灯B・C」が代表的な規制料金であり、
- 基本料金は10Aまたは1kVAごとに加算
- 電力量料金は120kWhまで、121〜300kWh、300kWh超の3段階制
- 燃料費調整単価には上限があり、燃料価格が急騰しても一定以上は上がらない
といった条件がすべて約款に明記されています。つまり規制料金は、国の認可を受けた「標準的な契約ルール」に基づいており、利用者にとって安定性が高い料金体系と言えます。
現在は 新規での契約はできず、既に契約中の方のみ継続利用が可能 です。
自由料金とは
自由料金とは、2016年4月の「電力小売全面自由化」以降に、電力会社や新電力が自由に設計できるようになった料金です。
それ以前は地域ごとの大手電力会社が独占的に供給しており、料金は国の認可を受けた「規制料金」で決まっていました。自由化によって家庭も事業者を選べるようになり、東京電力エナジーパートナー自身も「スタンダードプラン」や「夜トク」など新しいプランを設計できるようになりました。
自由料金は、ポイント還元やセット割引などのメリットがある一方で、燃料費調整に上限が設けられていない場合が多く、国際燃料価格の影響を受けやすい特徴があります。
従量電灯B・Cとは
従量電灯Bはアンペア契約(10A〜60A)、従量電灯CはkVA契約(6kVA以上)で、東京電力では「1kVA=10A」として換算します。
どちらも「3段階の電力量単価」で計算されます。これは、月の使用量が多くなるほど1kWhあたりの単価が高くなる仕組みです。
- 第1段階:120kWhまで(29.80円/kWh)
- 第2段階:121〜300kWh(36.40円/kWh)
- 第3段階:301kWh以上(40.49円/kWh)
たとえば350kWhを使った場合、最初の120kWhは第1段階、次の180kWhは第2段階、残り50kWhは第3段階で計算されます。
kVA方式とは
電流の大きさ(A)ではなく、契約容量(kVA)で基本料金が決まる方式です。6kVA以上の容量や主開閉器契約のご家庭などに適します。東京電力ではC契約やスタンダードLがこれに当たります。
LNGとは
LNGは液化天然ガスのことで、天然ガスを約−162℃で液化し体積を小さくして輸送します。日本の発電燃料の柱の一つで、燃料費調整の元データに影響を与える国際価格の主要品目です。
従量電灯BとCはどちらがよいのか?今も選べるのか?
従量電灯B(アンペア契約)と従量電灯C(kVA契約)は、東京電力の規制料金(経過措置料金)に分類されます。
現在は 新規での契約はできず、既に契約中の方のみ継続利用が可能 です。これは電力自由化後に規制料金から自由料金への移行が基本とされ、新規加入が停止されているためです。
では、既に契約している方にとって「BとCのどちらがよいか」ですが、基本料金と電力量単価は同じ仕組みなので、料金の差はほとんどありません。
- 10A〜60Aのアンペアブレーカー方式なら従量電灯B
- 主開閉器契約や6kVA以上の容量が前提なら従量電灯C
と、設備条件によって自動的に決まるケースがほとんどです。つまり料金の有利不利ではなく、契約方式や設備環境に応じて選ばれているのが従量電灯B・Cです。
※参考:東京電力エナジーパートナー「従量電灯B・C」
東京電力の主なプラン一覧(2025年9月時点)
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規制料金
従量電灯B(アンペア)/従量電灯C(kVA)。3段階の電力量単価は同水準で、未使用月は基本料金半額などの細則があります。
※参考:東京電力エナジーパートナー「従量電灯B・C」
自由料金
スタンダードS(アンペア)/スタンダードL(kVA)はベーシックな自由料金です。時間帯別では夜トク8・夜トク12、オール電化向けではスマートライフS/Lが用意されています。
なお、基本料金が「最大需要kW×単価」で決まる実量制のスタンダードXがありましたが、現在は新規加入受付が停止されています。
※参考:東京電力エナジーパートナー「スタンダード」
2025年9月時点:東京電力単価早見表(関東・税込)
出典は東京電力の単価ページです。
参考:
・東京電力エナジーパートナー「従量電灯B・C」
・東京電力エナジーパートナー「スタンダード」
・東京電力エナジーパートナー「夜トクプラン」
・東京電力エナジーパートナー「約款について」
・東京電力エナジーパートナー「おトクなナイト8・10」
・東京電力エナジーパートナー「スマートライフ」
・東京電力エナジーパートナー「スマートライフ 約款」
規制料金(従量電灯B/C)
区分 | 単位 | 単価 |
---|---|---|
基本 従量電灯B | 10Aごと | 311.75円 |
基本 従量電灯C | 1kVA | 311.75円 |
電力量 第1段階 | 〜120kWh | 29.80円/kWh |
電力量 第2段階 | 121〜300kWh | 36.40円/kWh |
電力量 第3段階 | 300kWh超 | 40.49円/kWh |
自由料金(スタンダード系)
区分 | 単位 | 単価 |
---|---|---|
基本 スタンダードS | 10Aごと | 311.75円 |
基本 スタンダードL | 1kVA | 311.75円 |
基本 スタンダードX | 1kW | 621.06円(新規加入受付停止) |
電力量 〜120kWh | 1kWh | 29.80円 |
電力量 121〜300kWh | 1kWh | 36.40円 |
電力量 300kWh超 | 1kWh | 40.49円 |
東京電力の時間帯別プラン一覧(2025年9月時点)
プラン名 | 基本料金 | 昼間の単価 | 夜間の単価 | 特徴 | 新規申込 |
---|---|---|---|---|---|
夜トク8 | 1kWあたり 255.69円 | 7:00〜23:00 → 42.60円/kWh | 23:00〜7:00 → 31.64円/kWh | 夜間8時間が割安 | 可能 |
夜トク12 | 1kWあたり 255.69円 | 9:00〜21:00 → 44.16円/kWh | 21:00〜9:00 → 33.33円/kWh | 夜間12時間が割安 | 可能 |
スマートライフS | 10Aごと 311.75円 | 6:00〜翌1:00 → 35.76円/kWh | 1:00〜6:00 → 27.86円/kWh | オール電化向け、小容量 | 可能 |
スマートライフL | 1kVAあたり 311.75円 | 6:00〜翌1:00 → 35.76円/kWh | 1:00〜6:00 → 27.86円/kWh | オール電化向け、大容量 | 可能 |
電化上手 | kVA方式(詳細は約款) | 季節・時間帯で細分化 | 季節・時間帯で細分化 | 旧オール電化プラン | 新規不可 |
おトクなナイト8 | kVA方式(詳細は約款) | 昼間 → 高め | 夜間8時間 → 安め | 旧ナイトプラン | 新規不可 |
おトクなナイト10 | kVA方式(詳細は約款) | 昼間 → 高め | 夜間10時間 → 安め | 旧ナイトプラン | 新規不可 |
ピークシフトプラン | kVA方式(詳細は約款) | 夏季昼間 → 高め | 夜間 → 安め | 夏のピーク抑制目的 | 新規不可 |
オール電化向け(スマートライフS/L)
深夜1時〜6時が割安で、エコキュートなどと相性が良好です。
帯域 | 単価 |
---|---|
昼間(6時〜翌1時) | 35.76円/kWh |
深夜(1時〜6時) | 27.86円/kWh |
付加項目
付加項目とは、基本の料金プランに追加で適用される費用や制度のことです。
電気の単価そのものとは別に、国や制度によって一律に加算される料金や、契約に付随して加わる調整費を指します。代表的なものは次の2つです。
再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)
再エネ(太陽光・風力など)を普及させるために、全国一律で課される費用です。電力会社を問わず、使った電力量に応じて加算されます。
燃料費調整額
火力発電の燃料(LNG=液化天然ガス、石炭、原油など)の輸入価格に応じて毎月変動する費用です。燃料価格が高騰すると電気料金に上乗せされ、下がれば減額されます。
実は「付加項目」はユーザーが選んで付けるオプションではありません。
どのプランを契約していても 必ず加算される共通項目 です。
たとえば従量電灯Bを契約していても、夜トク8を契約していても、毎月の請求には燃料費調整額と再エネ賦課金が含まれます。
つまり、電気代の請求書の「基本料金」や「電力量料金」と並んで、必ず記載される追加要素が「付加項目」です。
東京電力だけが高いのかを確かめる比較の作法
比較は必ず同じ「使用月」で、総額ベース(基本+電力量+燃料費調整[当月]+再エネ賦課金[当年度]− 料金支援[該当月])で行ってください。電力量単価だけの比較は誤差が大きくなります。
参考として、大手エリアの代表的な規制系プランの一部を示します。料金体系が異なる会社もあるため、総額比較の際は各社の当月単価をご確認ください。
※会社間で基本設計が異なるため、表の数値だけで優劣は決めず、同じ月の総額で比べてください。
毎月の電気代を正しくチェックする方法
- 契約内容を把握する
請求書やマイページで、規制料金か自由料金か、プラン名(従量電灯B/スタンダードS/夜トク8/スマートライフSなど)と契約単位(A・kVA・kW)をご確認ください。プラン一覧ページにも契約単位と単価が掲載されています。 - プランの基本と電力量単価を確認する
従量電灯B/C、スタンダード系、時間帯別の各単価を公式ページで確認します。 - 燃料費調整の当月単価を確認する
東京電力の「燃料費調整等のお知らせ」で当月値を確認し、使用量に掛け合わせます。 - 再エネ賦課金を加算する
2025年度は3.98円/kWhを使用量に掛けます。
※参考:経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2025年度以降の買取価格等と2025年度の賦課金単価を設定します」 - 国の料金支援を差し引く
対象月の値引き単価×使用量を控除します。2025年9月使用分は低圧で2.0円/kWhです。
※参考:資源エネルギー庁「電気・ガス料金支援」 - 合計して「当月の総額」を得る
他プラン・他社と公平に比べられる形になります。
モデル計算のひな形(例:従量電灯B 30A・260kWh)
- 基本料金=311.75円×3=935.25円
- 電力量=120×29.80+140×36.40=8,672円
- 燃料費調整=当月単価×260
※当月単価:その月に東京電力が公表している調整単価 - 再エネ賦課金=3.98×260=1,034円
- 料金支援=2.0×260=−520円
合計は上記の合算です。
端数処理などは約款に従います。
東京電力の契約タイプとライフスタイル別の課題とおすすめプラン
在宅家族で昼夜ともに使用が多い
課題は年間で300kWh超に入りやすいことです。スタンダードS/Lと従量電灯B/Cは電力量単価が同水準のため、差は主に付帯特典の有無と燃料費調整の上限有無で生じます。燃料価格が落ち着く月は自由料金のポイントなどが効き、燃料高騰時は規制料金側が安定しやすい傾向があります。毎月「当月の総額」で見直されると安全です。
共働きで夜間に家事が集中する
夜間の比率が高いご家庭では、夜トク8/12のような時間帯別プランが候補です。洗濯乾燥・食洗機・炊飯・エコキュートの深夜運転などを夜間に寄せるほど効果が出やすく、夜トク8なら夜間31.64円/kWhが適用されます。
オール電化で給湯・暖房も電気
スマートライフS/Lは深夜1〜6時が27.86円/kWhで、エコキュート深夜沸き上げや蓄熱暖房と相性が良好です。適用条件や加入可否は最新の公式案内をご確認ください。
瞬間的な同時使用が多い(IH・乾燥機・エアコンを同時稼働しがち)
瞬間の最大需要が高くなりやすいご家庭は、実量制のスタンダードXだと基本料金(1kWあたり621.06円)が膨らみやすく注意が必要です。現在は新規加入受付停止なので、スタンダードLや時間帯別でピーク分散を検討されるのが現実的です。
自由料金は本当にお得なのか
自由料金が有利かどうかは次の3つの要素で決まります。
1つ目は当月の燃料費調整単価です。自由料金は上限がない設計が一般的なため、国際燃料が上昇している月は「電力量料金+燃料費調整」の合計が増えやすくなります。規制料金は上限により増加幅が抑えられる月があります。
2つ目は付帯特典の実利用で、ポイントやセット割を実際に使うほど実効負担が下がります。
3つ目は生活時間帯の偏りで、夜トクやスマートライフのような時間帯別は夜間に使用を寄せるほど有利になります。
結論として、自由料金は「燃料費が落ち着く月+特典活用+夜間シフト可」なら有利に働きやすく、「燃料費が上昇する月+特典活用が薄い+夜間シフト不可」なら規制料金の方が安定しやすいです。毎月の総額で判定されることをおすすめします。
家庭ごとに違う改善ポイントを見つける方法

常時使用の把握手順
- くらしTEPCOなどのマイページでスマートメーターの30分データをご確認いただき、就寝中・外出中のベース負荷(下がりきらない線)を読み取ります。
- 冷蔵庫、Wi-Fi、給湯保温、24時間換気などの常時運転機器を洗い出し、可能なら一時的に個別オフにしてメーターの落ち幅を確認します。
- 家電の定格Wと使用時間から1日のkWhを概算し、月次の費用に換算して優先順位をつけます(kWh×〔電力量単価+燃料費調整+再エネ賦課金〕)。
上記の作業をご自身で進めにくい場合は、直近3か月の明細をご用意ください。
Silver Growth Studioの無料電力診断では、ベース負荷の推定と機器候補の優先度、想定削減幅、着手順をレポート化してご案内いたします。常時使用の特定が進むほど、プラン選びと運用の精度が上がりますので、お気軽に試してみてください。
具体例のモデル計算(2025年9月)
モデル:従量電灯B 30A・月260kWhの場合
- 基本料金=311.75×3=935.25円
- 電力量=120×29.80+140×36.40=8,672円
- 燃料費調整=当月単価×260
※当月単価:その月に東京電力が公表している調整単価 - 再エネ賦課金=3.98×260=1,034円
- 料金支援=2.0×260=−520円
合計は上記の合算となります。実際の請求では円未満処理などの細則が適用されます。
夜トク8を活用し、家事や給湯を夜間に寄せられるご家庭では、同じ「燃料費調整・再エネ賦課金・料金支援」を乗せたうえで、夜間単価の差分が総額に効いてきます。夜間シフトが難しい場合は、従量電灯やスタンダードの方が有利な月もあります。
参考リンク
- 東京電力 従量電灯B・C 単価・注意書き、1kVA=10Aの換算説明。東京電力
- 東京電力 スタンダードS/L/X(Xの新規受付停止、単価、最低月額など)。東京電力
- 東京電力 夜トク8/12 単価と時間帯。東京電力
- 東京電力 スマートライフS/L 単価と新規受付の注意。東京電力
- 東京電力 料金プラン一覧(プラン全体像)。東京電力
- 東京電力 燃料費調整等のお知らせ 2025年9月分。東京電力
- 経済産業省 2025年度の再エネ賦課金は3.98円/kWh。経済産業省
- 資源エネルギー庁 電気・ガス料金支援 2025年夏(7〜9月使用分)。電気・ガス料金支援
- 関西電力 従量電灯A 料金早見表・単価案内。関西電力
- 中部電力ミライズ 料金単価表(従量電灯など)。中部電力ミライズ
- 資源エネルギー庁 LNGの基礎知識。資源エネルギー庁
まとめ
電気代は、料金系統(規制・自由)、契約方式(A・kVA・kW)、そして当月の燃料費調整・再エネ賦課金・料金支援の掛け合わせで決まります。まずはご自身の契約種別と単価を正しく把握し、今月の総額で比較なさってください。夜間に寄せられるご家庭は時間帯別、安定性重視なら規制料金が候補になります。常時使用の特定や優先順位づけに不安があれば、直近3か月の明細をご用意ください。電力診断で原因の仮説、削減幅の目安、着手の順番まで具体的にご案内いたします。