賢い選択のための「大人のジレンマ」を提示
コスト削減 vs 品質不安のジレンマ
介護用品、特に毎日消費する大人用おむつは、家計にとって大きな負担です。そのため、ナショナルブランド製品よりも安価なプライベートブランド製品は、コスト削減を真剣に考える利用者や介護者にとって魅力的に映ります。
しかし、その安さの裏側には、「品質に問題はないか?」という根深い不安が潜んでいます。特に、尊厳や健康に直結する「臭い漏れ」や「締め付けによる不快感」、そして「吸収性能」の品質懸念は、多くの方が抱える共通の悩みです。安価なプライベートブランド製品を選んでも、漏れや不快感による交換頻度の増加やストレスといった「隠れたコスト」が発生し、結局高くついてしまうのではないかというジレンマがあります。
本記事の結論サマリー:プライベートブランドは経済的な選択肢ですが、製品によって「臭い対策」「肌戻り(ベタつき)」「装着感の窮屈さ」という明確な弱点があります。これを回避し、コストと品質を両立させる鍵は、「用途別製品の使い分け」と「パッドの併用、そして何よりも正しいサイズ選び」です。
本記事では、代表的なプライベートブランド製品であるマツキヨ(matsukiyo)とSOLIMOをナショナルブランド製品と比較し、データに基づいた評価を提供します。
挑戦者たちのプロファイル:プライベートブランドの徹底解剖
- matsukiyo:
ドラッグストア大手のマツキヨココカラ&カンパニーが展開するプライベートブランドです。特に「はくパンツうす型長時間快適」は「お肌にやさしい下着のような心地よさ」を謳っています。 - SOLIMO:
Amazonが大手医療衛生用品メーカーである白十字株式会社と共同企画した製品です。詳細な性能試験データが豊富に存在することが特徴です。
価格と性能のトレードオフを分析
「見えるコスト」比較:1枚あたりの単価
プライベートブランド製品はナショナルブランド製品(ユニ・チャームの「ライフリー」や大王製紙の「アテント」など)と比較し、1枚あたりの単価が非常に競争力があります。
ブランド | 製品名(例) | 1枚あたり単価(参考) | 参考価格情報(Lサイズ/入数) | 情報源/確認日 |
SOLIMO | うす型パンツ L~LL | 約60円(税込/送料込) | L~LL・36枚入りで2,168円 | Amazon, 2025年時点 |
matsukiyo | はくパンツうす型長時間快適 L | 約76円(税込/送料別) | Lサイズ20枚入りで1,518円 | 楽天市場, 2024年時点 |
アテント | 超うすパンツ 下着爽快 L | 約85円(税込/送料込) | Lサイズ22枚入りで1,870円 | Yahoo!ショッピング, 2025年時点 |
ライフリー | うす型軽快パンツ L | 約92円(税込/送料別) | Lサイズ30枚入りで2,759円 | 楽天市場, 2025年時点 |
注:価格は執筆時点(2025年時点)のオンラインストアにおける参考価格であり、販売店や時期、送料によって変動します。
「隠れたコスト」検証:安さがもたらす予期せぬ出費
単価の安さ(見えるコスト)だけを見てプライベートブランド製品を選んだ結果、性能が安定しなかったために、結果的に総コストが高くなる「隠れたコスト」が発生するリスクがあります。
- 性能の不安定さ:
matsukiyoのように「漏れる」という批判的なレビューも存在する製品では、頻繁な交換や、漏れによる衣類・寝具の洗濯や買い替え費用、そして介護者や利用者の精神的なストレスというコストがかかります。 - 介護施設における事例:
介護施設では、排泄ケアの改善とコスト削減は重要な経営課題であり、排泄コストを1年間で各階合計200万円減を目標とする取り組みも報告されています。単に安価な製品を使うのではなく、適切な製品とシステムを構築することで、大きな経済的効果が得られることを示唆しています。
プライベートブランド製品の決定的な強みと弱み(臭い・締め付け)
プライベートブランド製品の品質リスクを具体的に把握するため、専門機関によるテスト結果や利用者の声に基づき、特に懸念される「臭い」と「締め付け」について詳細に比較します。
臭いリスク検証:消臭性能の明暗
臭い対策は、利用者の尊厳や外出時の安心感に直結します。商品比較サイト「my-best」の検証では、臭気判定士が参加した臭い漏れのテストが行われており、プライベートブランド製品間で明確な性能差が見られました。
製品名 | 尿のにおい漏れのしにくさ | 便のにおい漏れのしにくさ | 特徴/課題(出典) |
SOLIMO | 良好な評価 (4.20点/5.00点) | 良好な評価 (4.20点/5.00点) | 消臭ポリマーと弱酸性素材を採用。抗菌成分配合が効果を発揮している。 |
matsukiyo | 良好な評価 (4.20点/5.00点) | やや低い評価 (3.80点/5.00点) | 抗菌成分が配合されておらず、便臭が漏れやすい傾向がある。 |
ライフリー | 良好な評価 (4.20点/5.00点) | 良好な評価 (4.20点/5.00点) | SOLIMOと同等の高評価を獲得。 |
考察:
- SOLIMOの強み:
SOLIMOはナショナルブランド製品(ライフリーなど)と並び、尿臭・便臭ともに漏れにくさで高い評価を獲得しており、消臭機能(消臭ポリマー、弱酸性素材、抗菌成分配合)が客観的に裏付けられています。 - matsukiyoのリスク:
matsukiyoは尿臭についてはナショナルブランド製品と同等の評価ですが、抗菌成分が配合されていないため、便臭のスコアが低く、レビューでも臭い漏れに関する指摘があり、「外出時の着用には不向き」と結論付けられています。
締め付けリスク検証:快適性とフィット感の落とし穴
パンツタイプおむつにおいて、履き心地の不快さや締め付けは、利用者の活動意欲や皮膚トラブルに影響を及ぼします。
- SOLIMOの決定的な弱点:
消臭性能や通気性 で優れるSOLIMOですが、履き心地のよさの評価(3.77点/5.00点)は低く、モニターからは「全体的に窮屈で長時間履いていられない」という厳しい意見が相次ぎました。これは、ラッパ状に広がらない履き口や、長めの股周りギャザーといった設計が原因と分析されています。参考:mybest(白十字 SOLIMO うす型紙パンツを検証レビュー!大人用紙おむつの選び方も紹介) - matsukiyoの快適性:
matsukiyoは履き心地のよさで4.40点という高評価を得ており、素材の柔らかさやウエストの締め付け感のなさは好評です。しかし、股周りのギャザーが長くきつく感じることがあるという指摘もあります。参考:mybest(マツキヨココカラ&カンパニー matsukiyo はくパンツうす型長時間快適を検証レビュー!大人用紙おむつの選び方も紹介)
基本性能(漏れにくさ・肌への優しさ)の比較
プライベートブランド製品は、吸収力や肌への優しさの面でもナショナルブランド製品と異なる「トレードオフ・プロファイル」を持っています。
- • 液戻り(肌戻り)のリスク:
matsukiyoは300mL(排尿2回分)の水分を吸収することは可能ですが、吸収実験では著しい「肌戻り」(一度吸収した水分が表面に逆戻りし、肌が冷たく濡れた感覚が残る現象)が発生し、長時間の快適な使用には適さないことが示唆されました。これは、吸収体の技術(液戻り防止性能)においてナショナルブランド製品(表面をドライに保つ高度な技術を持つ)に劣ることを示しています。- 補足:ナショナルブランド製品の中には、吸収容量だけでなく、吸水後のベタつきが少なく漏れにくい「サルバ やわ楽パンツ 安心うす型」 や、液戻りしにくい「アテント 夜1枚安心パンツ パッドなしでずっと快適」 など、高度な吸収技術を持つものがあります。
- • 通気性(かぶれにくさ):SOLIMOは、検証された商品のなかで通気性がトップクラス(4.00点/5.00点)であり、肌が敏感なかたにとって合理的な選択肢となり得ます。matsukiyoもかぶれにくさで高い評価(4.25点/5.00点)を得ており、吸水後に逆戻りしにくい点が評価されています。
悩みを解決する実践的なコスト最適化手順
プライベートブランド製品のメリット(低コスト)とデメリット(性能の不安定さ)を理解した上で、コストを抑えつつ快適な排泄ケアを実現するための具体的な3つの手順を紹介します。
【手順1】コストと品質を両立させる「パッド併用戦略」の徹底

コスト管理と快適性を両立させる最も効果的な方法は、パンツタイプのおむつ(アウター)と安価な尿とりパッド(インナー)を組み合わせて使用することです。
- パッド併用のメリット:
- 経済的:高価なパンツタイプは汚れない限り再利用し、排泄があったら安価なパッドだけを交換するため、総コストを大幅に削減できます。matsukiyoの紙パンツ専用パッドの1枚単価は約18.6円と非常に安価です。
- 衛生的・快適:パッドをこまめに交換することで、パンツ自体を交換する手間が省け、清潔な状態を保てるため、肌トラブルを防ぐことができます。
- 安心感:アウターとパッドの吸収量を合計(足し算)することはできません。尿とりパッドの吸収量(パッケージに排尿回数が記載)が実際の吸収量になります。SOLIMOはパッドとの相性も重視して設計されています。
【手順2】漏れと締め付けを防ぐ「正確なサイズ採寸」
ブランドや価格にかかわらず、おむつ選びで最も重要なのは利用者の方にぴったり合ったサイズを選ぶことです。サイズが合わないと、漏れや不快な締め付けの原因となります。
- ウエストサイズの測定:
パンツタイプはウエスト(胴回り)に合わせて選びます。ウエストの一番細いところを測り、パッケージの参考サイズと照らし合わせましょう。 - 股関節の動きやすさ:
立ったり歩いたりできる方には、股関節の動きを邪魔しないフィット感が理想です。介護福祉士の専門家も、「着用者さんの体形に合ったおむつ選び」が漏れを防ぐ鍵だと指摘しています。 - 用語補足:
「ラッパ状の履き口」や「短いギャザー」を持つ製品は、締め付けを感じにくい傾向があります。SOLIMOの履き心地が窮屈に感じられやすいのは、ラッパ状ではない履き口や長めのギャザー設計が影響していると分析されています。
【手順3】性能特性を活かした「用途別使い分け」とコスト対策
プライベートブランド製品を最大限活用するには、その強みと弱みを理解した上で、用途に応じてナショナルブランド製品と使い分けることが重要です。
用途別おすすめシナリオ | 優先事項 | 推奨製品 | 理由(製品特性) |
日中・短時間(コスト最優先) | 安さと履き心地 | matsukiyo | 1枚単価が安く、履き心地はプライベートブランドの中で優れる。ただし、肌戻りしやすく長時間の使用は避けるべき。 |
肌の健康・ムレ対策 | 通気性、かぶれにくさ | SOLIMO | 通気性が高く、抗菌成分配合で臭い対策も優秀。ただし、履き心地の窮屈さを許容する必要がある。 |
夜間・長時間 | 漏れにくさ、ドライ感 | ナショナルブランド製品(アテント、ライフリー) | 最大吸収量が高く、液戻り(肌戻り)防止機能が優れている。高い「信頼性」への投資。 |
外出時・着用バレ対策 | 目立ちにくさ、臭い対策 | ナショナルブランド製品(リリーフ まるで下着) またはSOLIMO | リリーフは履き心地と目立ちにくさで評価される。SOLIMOは消臭性能は高いが着用バレしやすい欠点あり。 |
経済的メリット:医療費控除の活用
おむつ代は、要件を満たせば医療費控除の対象となります。
• 主な要件:
◦ 傷病によりおおむね6ヶ月以上にわたり寝たきり状態にあり、医師がおむつの使用が必要であると認めた場合。
◦ 確定申告時に、医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要です。
• 注意点:確定申告の際には、購入時の領収書を保管しておく必要があります。医療費控除の要件や具体的な手続きは、国税庁のウェブサイトなどで最新の情報を必ずご確認ください。

まとめ:購入前チェックリスト
プライベートブランド製品は、使い方次第であなたのコスト削減の目標を達成できる強力な味方になります。最適な選択をするために、以下の3点を購入前に必ずチェックしてください。
- 尿量と交換頻度:
尿量が多い場合や長時間交換できない場合は、肌戻りしやすいプライベートブランド製品(matsukiyoなど)は避け、ナショナルブランド製品を推奨。日中こまめに交換するならプライベートブランド製品は有効。 - サイズの採寸:
ウエストサイズを正確に測り、製品のサイズ表示と照らし合わせる。 - 優先順位:臭い対策と通気性を最優先するならSOLIMO。履き心地とコストを最優先するならmatsukiyo。総合的な安心感(夜間・長時間)を優先するならナショナルブランド製品。