在宅で寝たきりまたは介助が必要なご家族の介護をされている皆様へ。
毎日の排泄ケア、本当にお疲れ様でございます。特にテープ式おむつをご使用の場合、おむつ交換時のご自身の腰への負担や、ご家族が座った時に腹部が締め付けられて苦痛を感じていないか、心配されているのではないでしょうか。
座位姿勢で腹部が締め付けられる不快感や、交換時の介護者様の腰痛(交換負担)は、介護の質と継続性に関わる大きな課題です。この記事では、要介護者様が座っても快適で、なおかつ介護者様の負担も軽減できる「テープ式おむつ」の選び方と、その性能を最大限に引き出すための実践的な「装着術」を詳しく解説いたします。
なぜ在宅介護で「締め付けないおむつ」が必要なのか
在宅介護者が直面する二つの大きな課題
介護は、介護者様(ご家族)と要介護者様(ご本人)の双方が抱える課題が深く結びついています。
- 要介護者様の不快感
最大の問題は、特に臥位(寝た姿勢)から座位(座った姿勢)へ移行した際の、腹部の圧迫感とフィット感の欠如にあります。寝ている状態では快適にフィットしていたおむつが、座ることで腹部が自然に膨らみ、締め付けが強くなることで不快感を与えます。姿勢が変わると腹囲が違うため、すき間が生じたり締め付けが発生したりすることが原因です。この不快感が続くと、皮膚のかぶれや褥瘡のリスクを高めるだけでなく、ケアへの抵抗感を生み出すことにもつながります。 - 介護者様の身体的負担(腰痛)
オムツ交換は、移乗介助や入浴介助などと同様に、身体的な負担が大きく、腰痛を発症しやすい介助の一つです。特に、自宅というスペースの限られた環境では、不自然な姿勢(前かがみ、中腰、ひねり)での介助を強いられやすく、腰部に強い負荷がかかります。多くの家族介護者様は専門的な技術や知識を身につける機会が十分ないため、身体に無理のある方法で介助を行い、腰痛を発症してしまいます。
負担の相互関連性と「装着術」の重要性
被介護者様が快適であればあるほど、ケアはスムーズに進み、結果として介護者様の身体的負担も軽減されます。この連鎖を断ち切る鍵は、被介護者様の快適性を向上させることにあります。
不快感は、おむつ交換時の抵抗や身体の硬直として現れることがあり、これが介護者様の作業を困難にし、腰痛のリスクをさらに高めます。これを解決するには、製品の持つ伸縮性という技術と、その技術を最大限に活かす正しい装着方法(装着術)が表裏一体の関係で重要となるのです。
座位で締め付けないための製品の選び方
寝て過ごすことが多い方や、主におむつ内で排泄する方には、横になった状態のままで交換できる「テープ止めタイプ」が適しています。
座位の快適性を高める製品技術
座った時の腹部圧迫を軽減するためには、体の動きに合わせて柔軟に対応できる製品を選ぶことが重要です。
- 伸縮性テープの役割
テープ式おむつの中には、寝たり起きたり、体の動きに合わせて伸縮するテープを採用している製品があります。例えば、アテントの「Rケア スーパーフィットテープ」は、『からだぴったりテープ』が伸縮することで、寝ているときも座ったときも体にフィットします。これにより、姿勢変化に伴う腹部の圧迫を軽減し、長時間にわたる快適性を生み出します。この伸縮性は、ポリウレタンや天然ゴムといった弾性を持つ素材によって実現されています。
※具体的な性能値や装着感は個人差があり、メーカー公表データを確認のうえ選定してください。 - サイズ選定
テープ止めタイプのおむつのサイズは、ヒップサイズを基準にして選びます。腰骨の位置、またはお尻の最も高くなった位置の周囲を測り、おむつのパッケージに記載されたサイズと照らし合わせましょう。サイズの合わないおむつは、漏れや不快感、皮膚トラブルの原因となります。
パッド(尿とりパッド)の併用メリット
テープ式おむつを使用する場合、テープ用パッドと組み合わせて併用するのが一般的です。
- 負担軽減と経済性:
パッドの交換だけで済ませることで、おむつ本体の交換頻度が減り、介護者様の交換の手間とコストを軽減できます。 - モレ防止の強化:
尿とりパッドは吸収力が高く、おむつの中にセットすることで排泄物の吸収をさらに強化し、漏れ防止に役立ちます。
座位で快適な「締め付けない装着術」
要介護者様の快適性と介護者様の腰痛軽減(負担軽減)を実現するための、具体的な装着手順とポイントを解説します。
交換前の準備と介護者様の腰痛対策

介護者と要介護者双方の負担を減らすため、事前の準備が大切です。
- 環境を整える:
要介護者様の羞恥心に配慮し、必ずカーテンやドアを閉め、プライバシーを確保します。 - ベッドの高さ調整:
介護者様が前かがみになるのを避けるため、ベッドの高さを介護者様の腰の高さに合わせます。可能であれば、スライディングシートや介助補助具の使用、2人介助なども検討すると安全です。 - 物品の準備:
新しいおむつ、パッド、使い捨て手袋、おしりふき、ゴミ袋などを手の届くところに順序よく配置します。 - ギャザーを立てる:
新しいおむつとパッドを軽く引っ張り、立体ギャザーをしっかりと立たせて舟形(ふながた)のようにしておきます。ギャザーを立てることで、漏れを防ぐ機能が発揮されます。
テープ式おむつの装着手順
ここでは、パッドを併用する際の、基本的な装着手順をご紹介します。
- 声かけと体位変換:
おむつ交換を始める前に必ず「これからおむつを交換しますね」など、羞恥心に配慮した声かけをします。
要介護者様を横向きにする際は、できるだけ体を近づけ、膝と肩を持ち、膝と腰の力を使って安全に行います(ボディメカニクス)。 - おむつの位置決め:
おむつの端を少し丸め、汚れた部分が肌に触れないように気を付けながら、体の下に差し込みます。
おむつのセンターライン(中心線)を背骨に合わせます。アテントのテープタイプの場合、横にある2つのテープの中間に腸骨の位置が来るのが目安です。
新しいおむつの上端がおへその上にくるくらいを目安にあてます。 - パッドのセット:
仰向けに戻した後、両足の間からパッドを引き出します。このとき、パッドを山折りにすると、股間が開きにくい方でも通しやすく、排尿口にしっかり沿わせることができます。
パッドはおむつの立体ギャザーの内側に収まるように広げます。 - 足ぐりの調整:
内ももの皮膚のたるみをおむつの外に出し、ギャザーを鼠径部(そけいぶ)に沿わせて、脚まわりにすきまを作らないように引き上げます。この隙間がモレに直結します。
「締め付けない」を実現するテープの止め方
テープの止め方を工夫する「クロス止め」は、身体へのフィット性を高め、おむつのズレを防ぐために非常に有効です。
- クロス止め:
- フィット性を高めズレを防止するため、下のテープ2か所を斜め上に向けて止めます。これにより脚まわりがフィットし、隙間がなくなります。
- 次に、上のテープ2か所を斜め下に向けて止めます。
- テープを止めた位置が左右対称になるように注意しましょう。
- 体型に合わせた調整:
- 細身の方の場合:
上下のテープを交差(クロス)させて貼ることで、おなかまわりや脚まわりのすきまをなくすことができます。 - 締め付けない目安:
おむつと腹部の間に指が1~2本入る程度の余裕を持たせます。
- 細身の方の場合:
- 伸縮性テープ使用時の注意点:
- 「アテント Rケア スーパーフィットテープ」など伸縮性のあるテープを使用する際は、テープを伸ばしすぎないように注意して留めることが推奨されています。伸ばしすぎると、座位時など体勢が変わった際に、テープが体の変化に追従して伸び縮みする余裕がなくなり、圧迫の原因となる可能性があります。
おすすめの「締め付けない」テープ式おむつ紹介コーナー
座位時の快適性やフィット感を追求した、主要なテープ式おむつ製品をご紹介します。記載情報は各メーカーの公表データに基づきます。
快適性とフィット感を追求した主要製品
製品名(メーカー) | 特徴・技術 | 座位時の快適性への寄与 |
---|---|---|
アテント Rケア スーパーフィットテープ(大王製紙) | 『からだぴったりテープ』が寝起きや体の動きに合わせて伸縮し、フィットします。『脚ぴたフィットゾーン』でパッドのズレを防ぎモレを防止します。Lサイズはヒップサイズ80~125cmに対応。 | 伸縮テープが姿勢の変化(座位時)に伴う腹部の圧迫を軽減します。 |
ライフリー のび~るフィットうす型軽快テープ止め(ユニ・チャーム) | 「2倍のび~るフィットテープ」を採用し、寝たまま装着しても座った時にお腹周りが楽であると訴求されています。ウエストの止め位置が分かりやすいマークを搭載。 | 伸縮テープにより、座位時のおなか周りの締め付けを軽減し快適なつけ心地を実現します。 |
リフレ 簡単テープ止めタイプ 横モレ防止(リブドゥコーポレーション) | 「クロスフィット」テープが長く使いやすく、体型に合わせて隙間なくフィット。独自の「横モレ防止空間」で尿や軟便の溢れを防ぎます。 | クロス止めに特化した設計により、体型に合わせた確実なフィット感を実現し、モレの不安を軽減します。 |
製品選びの重要ポイント
- 吸収回数: 夜間交換を減らすには吸収量を重視。各商品には「吸収回数目安」(1回=約150ml)が記載されています。
- 履き心地と着用感: 着け心地や素材感は個人差があります。気になる場合は少量パックや試供品などで試してから購入するのがおすすめです。
- サイズとフィット: ヒップサイズの測定を行い、メーカー表記に合わせて選定してください。
モレ・トラブル防止のための応用テクニック
姿勢変化によるモレ・ズレの対処
テープ止めタイプを使用している方で、寝た姿勢から座位、立位へと姿勢が変わった時、または体動が激しい時にモレる場合、お腹まわりに伸縮性のないテープ止めタイプよりも、伸縮性のあるパンツタイプの方が適している可能性があります。
テープ止めタイプを使用し続ける場合は、以下の対策が必要です。
- こまめな調整:
姿勢が変わるたび、あるいは一つの動作を終えた後、こまめにテープの位置を貼り直すか、パッドと紙おむつをあて直す必要があります。 - 股上を深くする:
股上を長くはかせ、上のテープが腰骨より上にくるようにあてることで、落ちにくく、ずれにくくなります。
拘縮などで足が開かない場合の交換手順

拘縮や関節等の痛みがある要介護者様の足を無理やり力を入れて開こうとすると、骨折などの重大事故につながる可能性があるため、絶対にやめましょう。必要に応じて専門職(看護師・リハビリ職)への相談を行ってください。
- 膝と股関節を立てる:横向きの状態で、膝と股関節を曲げて立てます。
- 片足ずつずらす:片足ずつ足を外側にずらします。
- 股関節を開く:膝を左右外側に開くようにして、股関節を開きます。
- 声かけの徹底:一つ一つの動作で声かけを忘れず、要介護者様と協力して体位交換を行いましょう。
5.3 トラブルを防ぐ交換の注意点
- おむつの多重使いの回避: 「尿漏れや尿量が多いから」と尿とりパッドを重ね使いする多重使いは逆効果です。パッドがずれて摩擦が生じ、モレや皮膚への負担につながるため、重ね使いは避けましょう。
- 観察の徹底: おむつ交換時には、要介護者様の排泄物の量や性状、皮膚の状態を観察しましょう。赤み・かぶれ・痛み・かゆみの訴えがないか確認します。必要に応じて医療・介護の専門職へ相談してください。
- 皮膚の保護: 拭き取りはこすらず押し拭きを基本に。皮膚保護剤の活用も検討します。
まとめ
在宅介護におけるテープ式おむつ交換の負担を軽減し、適切な製品の選択と正しい装着術の習得が不可欠です。
伸縮性のあるテープ(例:アテント Rケア スーパーフィットテープの『からだぴったりテープ』)を選ぶことで、要介護者様が座った時の腹部圧迫を物理的に軽減できます。さらに、センターラインの活用とクロス止めをマスターし、おむつと身体の間に指1~2本分の余裕を持たせることで、座位時の快適さとモレ防止を両立できます。
介護者様ご自身の腰痛予防のためには、ベッドの高さを調整し、ボディメカニクスを意識した介助姿勢(膝を使うなど)を実践しましょう。可能であればスライディングシート等の補助具の活用や二人介助を検討すると安全性が高まります。
適切な製品技術と正しい装着技術を組み合わせることで、介護はより快適で尊厳のある時間へ近づきます。製品スペックや吸収量などの数値はメーカー公表情報を確認のうえ、サイズ実測・試用・専門職への相談を組み合わせて、ご家庭に合う最適解を見つけてください。