紙パンツとパッドを別メーカーの組み合わせで使用した場合の問題は?

介護DX

介護をされている方にとって、排泄ケア用品の選択は大きな悩みの一つです。特に、メーカーの異なる紙パンツと尿とりパッドを「組み合わせて使っても本当に漏れないのだろうか?」という不安を抱えている方は少なくありません。価格や在庫の都合で、特定のメーカーに統一できない場合もあるためです。

この記事では、紙パンツとパッドの混合使用について、メーカーの公式見解と、介護のプロが実践する物理的な適合性の判断基準を解説します。これにより、混合使用が「いいのか、悪いのか」、その境界線を明確にし、読者である介護者がリスクを理解した上で自信を持って最適な選択ができるようになることを目指します。

重要な注意
メーカー混合は非推奨です。やむを得ず実施する場合は、必ず自己責任で行ってください。混合使用によって発生した不具合は原因特定が難しく、性能保証やサポートの対象外となる場合があります。まずは同一メーカー構成を基本とし、混合は小さく安全に試す前提で検討してください。

混合使用の可否 早見表

  • 混合使用OK
    • 紙パンツ用同士
    • パッド幅がパンツ立体ギャザーの内側幅に余裕をもって収まる
    • 昼間・立位中心・軽〜中等度の尿量、短時間の外出
  • 要検証
    • 長時間座位(車いす・運転)
    • 外出長丁場/夜間(仰臥位・側臥位)
    • 幅が境界的
    • ズレ止めテープの相性に不安がある
  • 混合使用NG
    • テープ用パッドの流用
    • ギャザーを押しつぶす・はみ出す
    • 便失禁を伴う
    • 重度+夜間長時間運用
    • パッド重ね使い

メーカー公式見解の徹底解説:推奨されない根拠

結論から言えば、紙パンツとパッドのメーカー混合はメーカー側から公式には推奨されていません。これは単なる販売戦略ではなく、製品の性能と品質保証に関わる明確な理由があるからです。繰り返しますが、混合は非推奨であり、実施する場合は自己責任です。

推奨されない理由

メーカーは、自社製品の組み合わせにおいて最大の性能が発揮されるよう、外側と内側の製品を連携させて設計しています。混合使用は、この製品間の相乗効果を失わせる原因となります。

  1. 専用技術の喪失(ユニ・チャーム/ライフリーの例)
    ユニ・チャームのライフリー製品には、パッドを併用する際に「パッドすっぽりポケット」や「パッドすっぽりギャザー」と呼ばれる特許技術が搭載されているものがあります。これは、パッドがギャザーの内側に収まりやすくなるよう、ギャザー間を広げた構造です。他社のパッドを使用すると、この交換しやすさやフィット感をサポートする機能が十分に生かせなくなります。
  2. 装着サポート機能の無効化(花王/リリーフの例)
    花王のリリーフの紙パンツ用パッドには、紙パンツにまっすぐつけやすいよう、ギャザーに青色の目印線が採用されているものがあります。これは、リリーフのパンツと組み合わせることで最適な位置決めを補助しますが、他社製品ではこの目印が機能しない可能性があります。
  3. リスク管理と性能保証
    もし混合使用でモレが発生した場合、メーカー側でその原因がパンツにあるのか、パッドにあるのかを特定することが困難になります。メーカーは自社製品の組み合わせを推奨することで、性能を保証し、万が一の際の責任の所在を明確にしています。

大王製紙(アテント)も、基本的には他メーカーとの併用が可能であるとしつつも、「アテント」シリーズでの組み合わせを強く推奨しています。

必ず守るべき製品カテゴリーの整合性

メーカーを問わず、外側のおむつ(パンツまたはテープ止め)と内側のパッドの種類を合わせることは必須です。

  • パンツタイプには「紙パンツ用パッド」を使用してください。テープ止め用パッドをパンツに使用すると、体との間にすきまが生まれ、モレの原因となります。

危険な誤解:吸収回数の足し算とパッドの重ね使い

介護者が良かれと思って行う以下の二つの行為は、モレの大きな原因となります。

  1. 吸収回数の合計は成り立たない
    例えば「5回吸収のパンツ」に「2回吸収のパッド」を併用しても、合計で7回分の吸収力になるわけではありません。パッドの裏面には防水シートが貼られているため、パッドが吸収しきれなかった尿は下のパンツには流れず、パッドの側面から横モレしてしまいます。実質的な吸収能力は、まずパッドの吸収回数が上限となります。
  2. パッドの重ね使いは厳禁
    尿とりパッドを2枚以上重ねて使うことは推奨されません。パッドを重ねても、防水シートがあるため下のパッドは尿を吸収しません。それどころか、パッド間に段差ができてすきまからのモレを誘発します。また、通気性が悪化しムレが生じ、かぶれの原因になるリスクも高まります。

混合使用の可否判断:モレのリスクを理解する科学的根拠

メーカーの推奨を外れた組み合わせを試みる場合、成功するかどうかを決定づけるのは「ブランド名」ではなく「物理的な適合性」です。以下はメーカー推奨外の参考情報であり、試す場合は必ず自己責任で、まずは小さく安全に検証してください。

ケース別ガイド

  • 昼の外出(1〜3時間・歩行主体):細身のパッドがギャザー内に収まり、装着後もギャザーが自立 → 混合OK寄り
  • 長時間座位(車いす・運転):座圧でギャザーが寝やすい → 要検証(体圧分散クッション併用/こまめな交換)
  • 夜間就寝(仰臥位/側臥位):横向きでギャザーが倒れやすい・尿勢が一方向に集中 → NG寄り(まずは同一メーカー構成)
  • リハビリ移動・軽運動:動作でギャザーが倒れないか事前チェック → 要検証(短時間トライ)

モレを防ぐ最重要防衛ラインは立体ギャザー

紙おむつとパッドのモレ対策において、最も重要な役割を果たすのが、おむつやパッドの両側についている立体ギャザーです。

  • 立体ギャザーは、尿や軟便の横モレを防ぐための役割を果たしています。
  • モレの多くは、この立体ギャザーが倒れたり(寝てしまったり)、内側に折り込まれたりすることで、堤防としての機能が失われるために発生します。

混合可否を決定する物理的な条件:パッドの幅

混合使用が成功するかどうかの絶対的な条件は、パッドを装着した際に、パンツ側の立体ギャザーが正しく機能しているかどうかです。

  • 鉄則:パッドは必ずパンツの立体ギャザーの内側に、完全に収まっていること。
  • もしパッドの幅がパンツのギャザー間の幅よりも広く、パッドがギャザーの上に乗ってしまったり、ギャザーを押しつぶしたりしてしまうと、堤防機能は失われ、横モレのリスクが格段に高まります。

寸法の測り方

  1. パンツ側:立体ギャザー内側の最狭部を定規で実測(mm精度推奨)。
  2. パッド側:吸収体の最大幅(外縁〜外縁)を実測。
  3. 判定:パッド幅 ≤ ギャザー内側幅 −(左右に各1〜2mm程度の遊び)
  4. 目視:セット後にギャザーが自立し、パッド端がギャザー上に乗らない。
  5. 注意:ズレ止めテープの粘着はブランド間で相性差あり。位置と幅を優先して評価。

実践検証の鍵となる寸法(ライフリーパンツとリリーフパッドの例)

ターゲットとしている「ライフリーパンツ」と「リリーフパッド」の組み合わせを成功させるには、リリーフパッドの幅が重要になります。

  • 花王のリリーフ「ズレずにピタッと超安心紙パンツ用パッド」の2回分吸収タイプは、製品寸法が巾13.5cm×長さ43.5cmです。
  • 同じく4回分吸収タイプは、製品寸法が巾15.5cm×長さ43.5cmです。

一般的に、パンツの股ぐりの幅は限られているため、幅の広い15.5cmのパッド(4回吸収タイプ)は、他社製パンツの立体ギャザーを押しつぶすリスクが高くなります。一方で、13.5cmのパッド(2回吸収タイプ)のようなスリムなパッドであれば、ライフリーをはじめとする他社製パンツのギャザー内にも収まりやすく、互換性を持つ可能性が高いと言えます。
※ 寸法は必ず最新の公式製品ページで確認してください(仕様変更の可能性があります)。

モレを防ぐ土台はパンツのサイズ適合性

パッドの組み合わせ以前に、外側の紙パンツのサイズが合っていることが前提です。

  • パンツが大きすぎると、足の付け根(足ぐり)やお腹周りにすきまができ、そこからモレてしまいます。高齢者は加齢に伴う筋力低下により足周りが細くなる傾向があるため、ウエストサイズだけでなく足ぐりにすきまがないかをチェックし、すきまが目立つ場合はワンサイズ下を検討する必要があります。
  • ライフリーのリハビリパンツなどは、足ぐりにふんわりフィットしてすきまモレを低減する「すきまピタッとギャザー」を搭載しています。

混合NGリスト

以下に当てはまる場合はメーカー混合使用を中止してください。

  • テープ用パッドをパンツに使用
  • 立体ギャザーが倒れる/パッドがギャザー上に乗る・はみ出す
  • パッド重ね使い(段差モレ・ムレ)
  • 便失禁を伴う/重度+夜間長時間の運用
  • 皮膚の発赤・掻痒・びらんが出た

皮膚トラブルと交換頻度

  • 初期は短い交換サイクル(2〜3時間目安)で様子を見る。
  • ムレ対策:通気性素材の選択、濡れたら早めに交換、保護剤は薄塗り。
  • 症状が続く場合は混合を中止し、同一メーカー構成または医療職へ相談。

メーカー推奨外を安全に小さく試すための実践検証ステップ

メーカー推奨外の組み合わせを試す場合は、安全第一で小さく、段階的に適合性を確認してください。ここに示す手順は参考情報であり、実施はすべて自己責任です。

ステップ1:購入前のチェックと予備知識

  1. 少量パックで試す
    新しく試したいパッドは、いきなりケース単位で購入せず、最も入数の少ないパックや試供品で入手してください。
  2. パッドのタイプを確認する
    必ず「紙パンツ用パッド」であることを確認してください。
  3. 体型と動作を考慮する
    モレの原因は製品だけでなく、ご本人の体型 や動作、排泄時の姿勢にも左右されます。日常の動作に合わせて、パンツとパッドの組み合わせを工夫する必要があります。

ステップ2:フィッティングテスト

尿を吸収させる前に、清潔な状態で物理的な相性を確認する最も重要な手順です。

  1. ギャザーを立てる
    パンツを履かせる前に、パンツとパッドの両方の立体ギャザーを軽く引っ張り、しっかりと立ててください。
  2. パッドを正しい位置にセットする
    パッドを二つ折りのまま紙パンツの底につくまで入れ、広げます。このとき、パッドがパンツの立体ギャザーの内側に完全に収まっているかを目視で確認してください。パッドがギャザーを押しつぶしたり、倒したりしていないかを確認することが、モレ防止の鍵です。
  3. ズレ止めテープの処理
    パッドにズレ止めテープ(前後)がついている場合は、それを紙パンツに押しつけて固定しますが、テープがお肌に直接当たらないように十分に注意してください。

ステップ3:正しい装着方法の遵守とモレ対策

  1. パンツをしっかり引き上げる
    パンツは、お腹側も背中側もウエストまでしっかり引き上げて装着してください。特に介護をする方は、背中側が上がっているかチェックが必要です。
  2. 肌着の挟み込みを防ぐ
    肌着の裾を紙おむつの中に挟み込まないように注意してください。肌着が尿を伝いモレさせる原因となります。
  3. 男性の場合の注意
    男性の場合、一般的には男性器を下向きに収めた方がモレにくいとされています。ただし、人によっては上向きや横向きの方が安定する場合もあるため、ご本人に合った向きで装着することが大切です。
  4. モレた場合の対応
    もしモレた場合、それは製品の組み合わせが原因か、サイズが原因か、装着方法が原因かを切り分けてください。

ステップ4:日中の試運転(夜間の初回使用は避ける)

新しい組み合わせを試す際は、必ず日中の、こまめに交換できる時間帯に試運転を行ってください。夜間は、モレが発生した場合にご本人と介護者の双方の負担が最も大きくなるため、最初の使用は避けるべきです。


まとめ

紙パンツとパッドを別メーカーで組み合わせることは、製品の性能を最大限に発揮させるという観点から推奨されません。混合は非推奨であり、実施する場合は必ず自己責任で行ってください。そのうえで、立体ギャザーの機能という物理的な適合性を理解し、段階的検証と正しい装着を守れば、モレを抑えつつ使用できる場面はあります。重要なのは、製品名ではなく、パッドの幅がパンツの立体ギャザーを潰していないかという一点です。

この知識と手順で、介護者は漠然とした不安から解放され、ご家族の状況に合わせた最適な排泄ケアを自信をもって提供できるようになるでしょう。

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